フロイト著作集第1巻

翻訳正誤表(気づいたところだけ)

『精神分析入門』

第23−24講

 

第23講

著作集p295/新潮文庫(新版)下巻p63

・それらの症状が解消することが

・それらの症状を揚棄することが

 

しばしば病人からそのために起こる不快を訴えられ、病人にとっては不快感あるいは苦悩をともなっているものです。

しばしばその人物から不愉快だwiderwilligと訴えられ、彼にとっての不快Unlustあるいは苦悩Leidenをともなっているものです。

 

症状そのものが要求する心的エネルギーの消費と、さらに症状にうちかつために必要な心的エネルギーの消費です。この両方の消費のために

症状そのものにかかるkosten心的出費Aufwandと、さらに症状にうちかつためにかかるkosten心的出費Aufwandです。この両方のコストKostのために

 

著作集p296

手もとにのこるエネルギーは非常に乏しくなり

手もとにのこる心的エネルギーは非常に貧しくなり

 

・したがってまた、病人から全ての重大な生活課題に対して活動する余力を奪ってしまう結果になる

・したがってまた、全ての重大な生活課題のための彼の心的エネルギーを麻痺させるという結果になる

 

文庫p64

・「病気である」ということは、本質的に実用的な概念である

・「病気である」ということは、本質的に実用上の概念である 

 

・ところが、

不要

 

現実によって拒否され、満足をえられないリビドーですから

現実によって追放abweisenされ、満足されないリビドーですから

 

そのリビドーのほうでは拒否された対象の代わりに、それとは別の対象でもいいというのに、現実が相変わらずこの願いをいれないとすれば

たとえそのリビドーのほうでは、頓挫したversagt対象の代わりに、それとは別の対象を受け入れてよいとしても、現実が相変わらず頑として譲らないとすれば

 

・すでに通りすぎてきたはずの体制のうちのある段階に立ちもどるか、以前に放棄した対象のひとつによって満足を得ようと努めることになるでしょう

・すでに克服されたはずの諸体制Organisationenのひとつにおける満足であるとか、以前に放棄した対象のひとつによる満足を、得ようと努めることになるでしょう

 

文庫p65

運動性神経支配への通路、従ってまた心的欲求の実現への通路

運動出力性Motilitaet神経支配への通路、従ってまた心的志向の現実化への通路

 

リビドーは進路を断たれているようなものですから、どこかに逃げ道を求めて、快感原則の要求に従っておのれに充当されたエネルギーのはけ口を見つけようと試みざるをえません。

リビドーは遮断されているようなものですから、快感原則の要求に従って、おのれのエネルギー充当の放出路を見つけてそこに避難ausweichenしようと試みざるをえません。

 

このような逃避を許すのは

このような避難ausweichenを許すのは

 

・リビドーが現在退行しつつある発達のかつての途上における固着であって

・リビドーが現在退行しつつある発達経路上にある固着であって

 

著作集p297

抑圧された場所を占拠することによって

抑圧された場所に充当することによって

 

その諸法則から遠ざかった

その掟Gesetzから逃れた

 

外的拒否と内的拒否という

外的頓挫Versagungと内的頓挫Versagungという

 

そのリビドーを充当していく諸観念は

そのリビドーを備給として転移していく諸表象は

 

本来の夢に検閲活動を行い、和解に達してのちに、(前)意識的活動の一部が妥協の産物としての顕在夢の形成を許す

本来の夢に、(前)意識的活動の一部が検閲活動を行い、合意Abfindungに達してのちに、妥協としての顕在夢の形成を許す

 

文庫p66

無意識体系中の

無意識的なものの中の

 

「逆充当」としてリビドーに従い

「対抗充当」としてリビドーにつきまとい、

 

さまざまに歪みを受けた派生物として出てくるのです。

さまざまに歪曲された派生物として出てくるのです。

 

睡眠を保護し

睡眠を保持し

 

・意識にのぼらせまい

・意識に侵入させまい

 

無意識的願望の欲求に対して

無意識的な願望の動きに対して

 

現実への逃げ道はただ睡眠状態によってさえぎられているだけだからです。(文庫)

現実への逃げ道はただ睡眠状態だけによってのみさえぎられているのです。(著作集)

現実への出口Auswegはただ睡眠状態だけによってのみさえぎられているからです。

 

・リビドーが回避を行いうるのは

・リビドーが避難Ausweichenを行いうるのは

 

・これらの固着というリビドーの退行的充当は、抑圧を迂回させて、リビドーを他へそらす −あるいは満足させる− ということなのですが、この場合には

・これら諸々の固着への退行的備給は、抑圧を迂回してリビドーを放出する −あるいは満足させる− ことに向かうのですが、この放出に際しては

 

無意識と古い固着とをへて

無意識的なものと古い諸々の固着という迂路を経て

 

文庫p67

このときに一方ではリビドーと無意識とが、また他方では自我意識と現実とが

このときに一方ではリビドーと無意識的なものとが、また他方では自我と意識と現実とが

 

著作集p298

リビドーは抑圧を打ち破る突破口を作るのに必要な固着をどこに見出すのでしょうか。

リビドーは抑圧を突破するのに必要な固着をどこに見出すのでしょうか。

 

幼児期に捨て去られた部分欲動と

捨て去られた、幼児期の部分的な努力と

 

それらのところにふたたびもどっていくわけです

それらのところに回帰zurueckkehrenするわけです

 

活動しはじめた

活性化された

 

文庫p68

神経症の原因・成立

神経症の原因(著作集)

図に書かれた部分。著作集を取りたい。

 

幼児期のはじめに獲得された素質

幼児期のはじめに獲得された素因

これ以外の部分では、素質=Anlage、素因=Disposition、体質=Konstitutionと訳し分けられている。

 

著作集p299

それぞれ特殊な強さで与えられているのに応じて

それぞれ特殊な強さで素質となっているangelegt seinのに応じて

 

・成人の場合も幼児の場合も、 同一の極端な症例と同一の代理諸関係とが見出されます

・そこでも、 同一の極端な症例と、同一の、代理しあう諸関係が見出されます

 

・すなわち性愛の体制の

・すなわち性的体制の

 

その幼児期の性的体験に束縛されていることがわかるのです

その幼児期の性的体験に拘束されていることがわかるのです

 

非常に大きい意義を有しているという印象を与えます。

非常に大きい意義を有しているという外見を与えます。

 

しかし、この治療という課題を別にすれば、生活をあまりに一面的に神経症的状況に合わせて解釈しようとする誤りにおちいることが容易に知られます。

しかし、この課題を度外視して考えてみると容易にわかることですが、人生をあまりに一面的に神経症状況に対応づけてしまうという誤りにおちいる危険があります。

 

後年になって占めたポストから追いやられるので、退行的に幼児期の体験に立ち戻ったのだ

後年になって占めた位置から追いやられたあとで、退行的に幼児期の体験に回帰zurueckkehrenしたのだ

 

・しかしその場合にも

・そうすればやはり

 

著作集p300/文庫p71

・この幼児性神経症が中断されることなくつづいて

・この幼児性の神経質が中断されることなくつづいて

 

その人が幼児神経症であったことをあとから洞察しえた

その人が幼児神経症であったことを事後的に洞察しえた

 

固着が内容をもちうる

固着が内実をもちうる

 

著作集p301

現実に対する態度を変えさせること

現況Aktualitaetに対する構え〈=体制、Einstellung〉を変えさせること

 

文庫p72

拒否された満足を代償することであり、これには、性的対象選択または体制のより早期の発達段階に帰るということ

頓挫したversagte満足の代理物を生むことであり、これには、対象選択または体制Organisationのより早期の発達段階に復帰するということ

 

文庫p73

彼は記憶していたり、あるいは後年の刺激にもとづいて想像したりする乳児時代にまで戻って行かなければならない

彼は想起したり、あるいは後年に誘発Anregungされて表象したりする乳児時代にまで戻って行かなければならない

 

著作集p302

強い不快感を示し、教育の力でこの不快感を除こうとしてもなかなか除けないのが普通です。

強い不愉快widerwillenを示し、教育の力でこの不愉快を克服することは難しいのが普通です。

 

文庫p74

この不快感は嫌悪感にまで高まります。

この不愉快Widerwilleは嫌悪Abscheuにまで高まります。

 

あれほどまでに熱望していた母の乳房への回想を呼び起こすことは、おそらく否定できないでしょう。

あれほどまでに欲望begehrenしていた母の乳房の記憶を呼び起こすことは、おそらく除外abweisenできないでしょう。

 

症状は、われわれが正常な仕方で満足を期待するようなものをすべて必ずしもわれわれに思い起こさせてはくれません。

症状は、われわれがふつう満足というものについて予想するようなものを必ずしもすべてわれわれに想起させるものではありません。

 

現実原則から快感原則に立ち戻った結果と

現実原則を回避して快感原則に復帰した結果と

 

外的動作の代わりに内的動作をもってくる、すなわち、行為に代えるに内的適合をもってする(文庫)

外的動作の代わりに内的動作をもってくる、すなわち、行為に代えるに適応をもってする(著作集)

外的活動Aktionの代わりに内的活動をもってくる、すなわち、行動Handlungに代えるに内的適応をもってする

 

いずれわかるようになる新事実

いずれ経験する新事実

次の段落の冒頭に対応。

 

無意識過程、すなわち圧縮と移動がともに働いているということです。(文庫)

無意識過程、すなわち凝縮と移動がともに働いているということです。(著作集)

無意識的なもののプロセス、すなわち圧縮と移動がともに働いていたということです。

 

極度の圧縮によってただ一つの感覚または神経支配に押し込められ(文庫)

極度の凝縮によってただ一つの感覚または神経支配に押し込められ(著作集)

極度の圧縮によってただ一つの感覚入力Sensationまたは神経支配へと押しやられ

 

著作集p303/文庫p75

われわれには安全な地盤の上で動いているという感じがあるはずです。

われわれは確実な地盤の上で動いているという感じを抱くことができます。

 

患者の作りごとであり、空想である

患者のでっち上げErfindungであり、空想である

 

構成あるいは想起された体験は

構築あるいは想起された幼児体験は

 

文庫p76

意識に持っていたばらばらな幼児期の記憶は

意識的に持っていたばらばらな幼児期の記憶は

 

・われわれが患者の虚構の話に本気で耳を傾けるなどということは、われわれは侮辱されたがっているとでもいうようなものです。 われわれにとっては現実と虚構は

・患者はわれわれを、でっち上げたerfinden歴史に取り組ませてきたのですから、われわれはもう少しで気を悪くしそうなくらいですWir sind in Versuchung, beleidigt zu sein。 われわれにとっては現実とでっち上げErfindungは

 

著作集p304/文庫p77

歴史を隠してしまう空想を

歴史を隠してしまった空想を

 

・「空想の産物」

・「絵空事Einbildungen」

 

唯一の正しい態度なのです。

唯一の正しい構えEinstellungなのです。

 

この空想内容を

この空想の内容を

 

文庫p78

神経症者の若い時代の生活史の中で

神経症者の若い時代の歴史の中で

 

おどしつけられたことを正確にはっきりと記憶している

おどしつけられたことの正確な意識的記憶を持っている

 

著作集p305/文庫p79

同じように、幼い子供の場合、それほどの理解力や記憶力があるとは信じられないとしても、無産階級以外の家庭でも、両親やほかの大人の間の性行為を目撃することは決してありえないことではありません。そして、子供はあとになってからこの印象の意味を理解し、それに反応することがあるのも否認できません。

同じように、無産階級以外の家庭でも、幼い子供が理解力や記憶保持Gedaechtnisが全くないと思われている場合には、両親やほかの大人の間の性行為を目撃することも決してありえないことではありませんkeineswegs ausgeschlossen sein。子供は事後的にこの印象の意味を理解し、それに反応することがあるのも除外nicht abzuweisenできません。

 

この性交空想が動物(犬)の交尾の観察にもとづいており、思春期の子供たちの好奇の目が満たされないことが

この空想が動物(犬)の交尾の観察に便乗しており、思春期の子供たちの満足されない視覚欲Schaulustが

 

この種の空想の最も極端な例は

この種の最も極端な産物Leistungは

 

現実の想起である

現実的記憶である

 

しかしこのように罪を父親に帰そうとする空想的性格も、また罪を父親に帰するようにかりたてる動機も、その正体はともに疑いの余地なく明らかです。

しかしこの告発Beschuldigungの空想的性格も、またそのようにかりたてる動機づけも、ともに疑いの余地はありません。

 

文庫p80

子供は熱望した対象を

子供は欲望begehrenした対象を

 

著作集p306

これらの出来事が現実のものであったならば、格別の問題はありませんが、現実のものではなかった場合には、それらの出来事は示唆的な諸事件から組み立てられ

これらの出来事が現実に含まれているならば格別の問題はありませんが、現実から拒絶される場合には、それらの出来事は示唆から組み立てられ

 

その源が欲動にあることは

その欲動源泉については

 

性的欲情が燃え上がったこと

性的興奮が燃え上がったこと

 

空想にふける子供は

空想する子供は

 

あっさりと埋めてしまう

あっさりと埋めてしまった

 

文庫p82

空想が心情生活の中でどういう位置を

空想が心的生活の中でどういう位置を

 

人間の自我は外界の必然の働きを受けて

人間の自我は外的な窮迫Notの影響を受けて

 

著作集p307

快感を求める欲求の

快感志向の

 

これは性的欲求についてだけ言えることではありません

これは性的な快感志向についてだけ言えることではありません

 

捨てられた快感感受の方法とを

捨てられた快感獲得の方法とを

 

どんな欲求も間もなく

どんな志向も間もなく

 

空想による願望充足に時を費やしていれば、それが現実でないということははっきりわかっていても、ある満足をうることができる

空想による願望充足に停滞していれば、それが現実でないという知は損なわれないにもかかわらず、ある満足を招くことができる

 

現実ではとっくに断念した

実際にはとっくに断念した

 

文庫p83

補助的な空想なしでは

補助的な構築物なしでは

 

空想という心の国を創造したことは

空想という心的領域を創造したことは

 

空想という心の国もまた、現実原則から切り離された

空想という心的領域もまた、現実原則から逃れた

 

誇大妄想的願望、性的な願望の観念的満足であって

誇大症的願望、エロス的な願望の、表象された満足であって

 

・現実の同意がなくても快感が獲得できる状態への復帰は

・現実の同意とは無関係に快感を獲得できる状態の再建は

 

夜になって欲動の働きが自由になった

夜になって欲動の動きが自由になった

 

著作集p308

無意識的な白日夢も存在するということもよく知っています。

無意識的な白日夢も存在するという考え方に習熟しています。

 

文庫p84

・神経症の源泉でもあるのです

・神経症症状の源泉でもあるのです

 

拒否(挫折体験)が生じた場合は

頓挫Versagungが生じた場合は

 

リビドーは退行して自分が前に放棄しておいた場所を占拠すると申しましたが(文庫)

リビドーは退行して自分が前にあけておいた場所を占拠すると申しましたが(著作集)

リビドーは退行的に自分が放置しておいた場所に備給すると申しましたが

 

これらの空想は、ある程度まで辛抱していたのです。

これらの空想は、ある程度まで許容されていたのです。

 

現実化の方向への激しい衝動が起こってきます。

現実化の方向への衝迫Drangが発達します。

 

文庫p85

こうしていまは無意識となっている空想から

こうしていまは無意識的な諸々の空想から

 

いままで無害なままに耐えられてきた空想に過度のリビドー充当をすることをあらわすものと

いままで無害なものとして許容されてきた空想に重層備給〈=過剰備給、Ueberbesetzung〉することをあらわすものと

 

停滞しているリビドーが別のはけ口を見出しかねる場合には、少しでも力の均衡が破れるとすぐに症状を形成せざるをえない

鬱積しているリビドーが別の出口を見出しかねる場合には、少しでも力の移動があるとすぐに症状を発展せざるをえない

 

著作集p309

内向の段階にとどまっている

内向の段階に停滞している

 

文庫p86

二つの欲求の間の葛藤は

二つの志向の間の葛藤は

 

エネルギー充当がある強度に達しないうちは

一定の備給強度に達しないうちは

 

神経症疾患に対する抵抗能力にとっては、量的要因のもつ意味は決して小さくはないのです。

神経症疾患に対する抵抗能力にとっても、量的要因のもつ意味が小さくはないのは同じです。

 

質的には快感を求め不快を避ける努力として記述しうる

質的には、快感の獲得と不快の予防を志向することと記述しうる

 

不快を生み出すその興奮量の蓄積を防止する

不快を生み出すその鬱積を妨げる

 

文庫p87

あの欲動の要求に対する逆充当は

あの欲動の要求に対する対抗備給Gegenbesetzungは

 

まさにこのような片寄り、さらにはもっと広範囲にわたる片寄りを

まさにこのような逸脱Abweichungen、さらにはもっと広範囲にわたる逸脱を

 

著作集p310

今にも神経症になりかねない内向性の素質をもっています。

素質という点では、いまにも神経症になりかねない内向者です。

 

強すぎるともいえる欲動の要求にかられて

強すぎる欲動欲求にかられて

 

これらの欲求を満足させうる手段(文庫)

これらを満足させうる手段(著作集)

著作集を取る。

 

現実を捨てて

現実を回避して

 

神経症が、芸術家の発達の完成された姿だということにならないためには、たぶん種々さまざまのことが力を合わせているにちがいありません。

これが芸術家の発達の結果のすべてだということにならないためには、たぶん種々さまざまのことが協働しているにちがいありません。

 

文庫p88

不足を感じている者は誰でも

欠乏している者は誰でも

 

空想の泉から快感を獲得する

空想という源泉から快感獲得に至る

 

わずかばかりの白日夢で満足するのです

わずかばかりの白日夢でよしとするのです

 

他人といっしょに楽しめるようにする

他人といっしょに享楽できるようにする

 

それが禁断の泉から出てきたものであること

それが禁じられた源泉に由来するものであること

 

このように表現することに多大の快感を得ている結果として

このように表現することに多大の快感獲得を結びつけている結果として

 

この表現にうち負かされて排除されます。

この表現にうち負かされて揚棄されます。

 

無意識という近づきがたくなっている快感の泉から

無意識的なものという近づきがたくなっている快感源泉から

 

空想を通じて実際に獲得する

空想を通じて達成する

2001年9月17日作成/2003年1月2日増補改訂(改訂分は行頭の「・」で表記)


第24講

著作集p311/新潮文庫(新版)p90

外部からの影響とに対する彼らの不可解な反応、その過敏性

外的影響とに対する彼らの不可解な反応、その易刺激性

 

著作集p313/文庫p92

公平な審判官でないことは明らかです

公平な審級でないことは明らかです

 

それを抑圧してしまった力なのですから

それを抑圧物へとおとしめてしまった権力Machtなのですから

 

文庫p93

まず第一に拒否された性愛の要求があります。これらの要求の範囲と意義とは自我の見解を以てしては決して察知しえないものである

まず第一に追放abweisenされた性愛の要求があります。われわれにとって、これらの要求の範囲と意義とは自我の見解に従っていては決して察知しえないものである

 

自我自身がその症状を欲し

自我自身がその症状を望み

 

自我がかなり受動的な態度に甘んじ、そしてそれを自らに秘してごまかそうとしている

自我がかなりの部分で受動性を甘受し、そしてその受動性を自らに秘してごまかそうとしている

 

自分とは関係のないものが

なにやら異様なものが

 

著作集p314/文庫p95

自分のための後援興行の時には(著作集)

自分のための慈善興行の時には(文庫)

自分の〈引退や受賞の〉ための記念公演では

 

症状に転化する空想は

症状に変換umsetzenされる空想は

 

自我の逆充当または反動形成は

自我の対抗備給Gegenbesetzungまたは反動形成は

 

保護と利得を求める

保護と利得を志向する

 

著作集p315

症状形成による葛藤の解決は

症状形成による葛藤の処理Erledigungは

 

疑いもなく自我は苦痛である心的な一大作業を免れる

疑いもなく自我は、苦痛に感じられる内的な一大作業を免れる

 

文庫p97

あまりに貞淑である

あまりに道義的sittlichである

 

なおこの残酷な夫に執着をもっているというような場合には

なおこの残酷な夫に拘束されているというような場合には

 

著作集p316

結婚生活の圧迫から自由になる時間をもつことを許さざるをえないようにさせるのです(文庫)

結婚生活の抑圧から自由になる時間をもつことを許さざるをえないようにさせるのです(著作集)

結婚生活の禁圧Unterdrueckungから自由になる時間をもつことを許さざるをえないようにさせるのです

 

現実にその代償を見出しえない

現実にその代理物を見出しえない

 

私が自分で否定した見解を

私が自分で却下した見解

 

文庫p98

症状に付随する苦痛はおそらく葛藤の苦悩と等価の代償でしょうが、不快感だけは余分物だということになります

症状に付随する苦悩Leidenの感覚はおそらく葛藤の苦悶Qualと等価の代理物でしょうが、見かけ上は、不快の追加分になります

 

症状に伴うこの不快感から

症状に伴うこの不快から

 

ひどく能動的ではない

ひどく能動的ではなかった

 

病気という心的体制が

例えば病気もそうですが、ある心的体制が

 

文庫p99

この体制と心情生活の他の諸成分、根本においてはこの心的体制に敵意をもつ他の成分との間にさえ、一種の仮停戦条約が結ばれるようになります。

この体制と心的生活の他の諸成分、根本においてはこの心的体制に敵対的な他の成分との間にさえ、一種の共存共栄状態modus vivendiが形成されます。

 

著作集p317

・ほかでもない彼の最初の生活を奪ったもののせいなのです。

・ほかでもない彼の最初の生活を奪ったものに基盤をおいて成り立っています。

 

文庫p100

もし選択の余地があるものならば、われわれはむしろ運命を相手に正々堂々と戦って滅んで行くほうを選ぶべきでしょう。

もし選択の余地があったとすれば、むしろ運命を相手に正々堂々と戦って滅んで行くほうを選んだでしょうに。

 

・まず症状解釈を徹底的にやり遂げねばなりません

・まず症状解釈によって徹底作業durcharbeitenしなければなりません

著作集6巻で「徹底操作」と訳されている語。

 

著作集p318/文庫p101

たとえば自慰で満足をえていた男が、ある特定の型の現実神経症にかかったこと(文庫)

たとえばオナニーで満足をえていた男が、ある特定の型の現実神経症にかかったこと(著作集)

たとえば手淫でよしとしていた男が、ある特定の型の現実神経症にかかっていたこと

原文に「手を用いた」という表現が含まれている。

 

同じく問題のある他の性生活法に従うようになると(文庫)

同じく不完全な他の性生活法に従うようになると(著作集)

同じく問題のある他の性的な行動指針Regimeに従うようになると

行動指針Regimeは、著作集p331上段/文庫p123にも登場する

 

文庫p102

罹患が必ずしもつねに性生活に関係をもつものではない

罹患の誘発が必ずしもつねに性生活に関係をもつものではない

 

リビドーを何らかの方法で処理する能力を失ったときだけです。

リビドーを何らかの方法で投下するunterbringen能力を失ったときだけです。

unterbiringenには、1.格納する/2.収容する/3.投下・配属するの3つの意味があるが、前二者は「場所を示す語句を伴う」とのことなので、3.を採用した。

 

自我にとってこの課題を解決することは

自我にとってこの課題の処理Erledigungは

 

つまり、神経症になるのです。

つまり、神経症を可能にするのです。

 

著作集p319

神経症の症状はリビドーからエネルギーの供給を受けており

神経症の症状はリビドーによってまかなわれており

 

文庫p103

代償満足なのです

満足代理物なのです

 

頭が重い感じ、痛みの感じ

頭の重さ、痛みの感覚

 

・われわれの学び知っている複雑な心的機制は

・われわれの学び知ってきた複雑な心的機制は

 

それらの肉体的過程こそ、事実、われわれが長いあいだ精神神経症の症状だと思ってきたものなのです。

それらの症状こそ、事実、われわれが長いあいだ精神神経症の症状とみなしてきたものなのです。

 

・しかしその際これらの症状は

・しかしその際、肉体的事象は

 

・性的機能は身体的活動にも影響を与えるのです。精神神経症の症状は、その心的作用の障害の現れである

・性的機能は心的生活にも身体的生活にも影響を与えるのです。精神神経症の症状は、性的機能の心的作用の障害の表出である

 

文庫p104

現実神経症はこういう性的障害の直接的な身体的結果であるという見解に対して

上に述べた見解に対して

 

著作集p320

昔から性的要求の本性に関して

昔から性的な希求Verlangenの本性に関して

 

惚れ薬によって恋心が起る

惚れ薬によって惚れ込みVerliebtheitが起る

 

彼らは作用の動因をいわば外界へ移している

彼らは作用する動作主Agensをいわば外界へ移している

 

文庫p105

ひとつの上部構造であって

ひとつの上部の建造物Bauであって

 

著作集p321/文庫p107

精神神経症の症状と混合している

精神神経症的な疾患と混合している

 

著作集p322/文庫p108

神経衰弱と転換ヒステリーと呼ばれている感情転移神経症との間に、また同時に心気症と、あとでパラフレニー(精神分裂病およびパラノイア)としてお話しするはずの病型との間に最も明瞭に観察されます。 (文庫)

神経衰弱と転換ヒステリーと呼ばれている感情転移神経症との間に、また同時にヒポコンデリーと、あとでパラフレニー(早発性痴呆およびパラノイア)としてお話しするはずの病型との間に最も明瞭に観察されます。 (著作集)

神経衰弱と転換ヒステリーと呼ばれている転移神経症との間、および不安神経症と不安ヒステリーの間に、最も明瞭に見られますが、ヒポコンデリーと、あとでパラフレニー(早発性痴呆およびパラノイア)としてお話しするはずの病型との間にも観察されます。

 

リビドー的空想あるいは回想に対する代償的満足であることがわかります。

リビドー的空想あるいは記憶に対する満足代理物であることがわかります。

 

神経症にかかりやすい人々の間では

神経症の素因のある人々の間では

2001年9月30日作成/2003年1月2日増補改訂(改訂分は行頭の「・」で表記)