フロイト著作集第１巻

翻訳正誤表（気づいたところだけ）

『精神分析入門』

第２７講

　２７，２８講では精神分析の臨床について扱われている。いくつもの語に「治療」という訳が当てられているが、日本語で「治療」というと、「患者に働きかけて、病状が改善する（治る）」という二段階の両者を含意してしまう。単に患者への処置について述べられたことを、病状改善に役立つことのように読まれてしまうことは誤解を招きやすいので、以下の２講では、Behandlungに「手当て」、Therapieに「療法」、Heilungに「治癒」、Technikに「技法」を当て、Kurについてのみ（この語にも「治す」という意味は希薄であるが、「kurieren」という動詞には「治す」という意味がありそうなので）「治療」を用いることとする。
　このために今回、２度目の改訂を行うが、（１度目の改訂分には行頭に「・」を付したので）２度目の改訂分は行頭に「・・」と表記することとする。

　

著作集ｐ３５４／新潮文庫（新版）下巻ｐ１６４

・ある種の期待が生じてきたことでしょう。その予想がみなさんを迷わすことが

・ある種の予期が生じてきたことでしょう。その予期がみなさんを迷わすことが

・・自分たちがそもそも精神分析ができるかどうかは治療ということを基礎としているのに、この治療ということには一言も触れず

・・自分たちがそもそも精神分析を行う可能性は療法〈テラピー〉を基礎としているのに、この療法〈テラピー〉には一言も触れず

・・私もこの治療というテーマについて

・・私もこのテーマについて

著作集ｐ３５５

・・治療の目的のためには

・・療法〈テラピー〉上の目的のためには

・・この治療は大体

・・この療法〈テラピー〉は大体

文庫ｐ１６５

・・では、どこに治療が影響を及ぼしていく余地があるのでしょうか。治療活動を無効にしかねないものとしては、まず第一に、遺伝的素因があります。

・・では、〈われわれが論じてきたこと以外の〉どこに療法〈テラピー〉上の影響を及ぼしていく余地がまだ残っているでしょうか。まず第一に、遺伝的素因があります。

・・他でもない治療に携わる医師として

・・他でもない療法家〈テラピスト〉Therapeutとして

「現実の拒否

「現実的頓挫Versagung」

愛の欠如から生ずる

愛の欠乏から生ずる

・・そこには非常に有効な治療をするための方法も

・・そこには非常に有効な療法〈テラピー〉をするための方法も

文庫ｐ１６６

・・ヨーゼフが行ったような治療

・・ヨーゼフが行ったような療法〈テラピー〉

もろもろの障害は消滅してしまいます

もろもろの困難は消滅してしまいます

・・われわれの療法のなかに

・・われわれの療法〈テラピー〉のなかに

著作集ｐ３５６

・・他の医師たちなら別の治療法で貧困者の治療ができもしましょうが

・・他の医師たちなら別の手当ての方法を用いて行っているのでしょうが

・・われわれの影響力を疑うための拠点を見つけたと思っておられるにちがいありません。社会の要求する道徳的拘束が、患者に押しつけられている不自由な状態に大いに関係しているとすれば、治療は患者に対してそれらの拘束を乗り越え、社会が尊重はするがほとんど遵守することのない理想の実現を断念して、満足と回復とを求める勇気を与えたり、あるいは直接に指示したりすることができるはずだ。つまりわれわれは性的に充分に人生を「楽しみつくす」ことによって健康になるといっているというふうに世間では思いこんでいます。しかしこの場合は、精神分析による治療には、それが一般の道徳をないがしろにするという非難がふりかかってきます。分析治療は個人に性的自由を与えることによって、公共の道徳の基礎を掘り崩すと非難されるのです。

・・われわれの影響力に対する攻撃点を見つけたと思っておられるにちがいありません。『社会の要求する道徳的制限が、患者に押しつけられている欠乏に大いに関係しているならば、手当ては患者に対してそれらの障壁を乗り越え、社会が尊重はするがほとんど遵守することのない理想の実現Erfuellung〈＝充足〉を断念して、満足Befriedigung〈＝解消〉と回復とを求める勇気を与えたり、あるいは直接に指示したりすることができるだろう。だからひとは性的に「放埒するausleben」ことによって健康になる。しかしこの場合は、分析的手当てには、それが一般の道徳の役に立たないという暗い影が落ちる。分析的手当てが個人に与えるものは、世間一般Allgemeinheitからは剥奪entziehenされてしまったのだ。』

このあと「（人生を）楽しみつくす」という訳語が頻出するが、独語ではauslebenである。

文庫ｐ１６７

患者のリビドーの興奮と性的抑圧との間に、および官能を求める傾向と禁欲を目指す傾向との間に

患者のリビドーの動きと性的抑圧との間に、および官能的な方向と禁欲を目指す方向との間に

神経症者においては（文庫）

神経質者においては（著作集）

著作集が正しい。

抑圧された性的志向がはけ口を求めて症状を作り出したのです。

禁圧された性的志向が症状のなかで一息ついたのです。

排除された性的抑圧は症状に代わらざるをえない

押しのけられたbeiseite schieben性的抑圧は症状に置き換えersetzenられざるをえない

・・葛藤がどっちつかずで動揺しているために、医師が一方に加担するという契機が決定権を持つという場合はごくわずかしかないのです。しかもこの場合には、もともと分析治療は必要ではないのです。

・・葛藤が非常に不安定で、医師が一方に加担するといった契機〈モーメント〉が〈天秤の〉傾きAusschlagをもたらす場合はごくわずかしかないのです。しかもこの場合には、もともと分析的手当ては必要ではないのです。

ここではMomentは物理学的な意味で用いられているかもしれない。

その償いを求めたり

その代償を求めたり

著作集ｐ３５７

神経症者の病因的葛藤を、それと同一の心理的な地盤の上に立っている心的諸欲動の正常な葛藤と混同してはならない

神経症者の病因的葛藤を、同一の心理的な地盤の上に立っているいくつかの心的動きのあいだで起こる正常な葛藤と混同してはならない

文庫ｐ１６８

・たがいに争っているのは（著作集）

・たがいに争っているこれら二者は（文庫）

文庫をとる。

前意識と意識の段階までもちきたらされた力と、無意識の段階にとめおかれた力との

前意識的なものと意識的なものの段階までもちきたらされた力と、無意識的なものの段階に抑留された力との

・・このぶつかり合いができるようにするというのが治療の唯一の課題である

・・このぶつかり合いができるようにするというのが療法〈テラピー〉の唯一の課題である

・・治療期間中はさしひかえておき、治療が終わってから

・・手当ての期間中はさしひかえておき、手当てが終わってから

全く寄る辺のないある種の人々

全く寄る辺なくしっかりしないある種の人々

この意識的に守っている制限を

この意図的に守っている制限を

文庫ｐ１６９

・分析治療を受ける神経症者は享楽のかぎりを尽くすようにと教えられている（文庫）

・分析治療を受ける神経質者は享楽のかぎりを尽くすようにと教えられている（著作集）

・分析治療Kurを受ける神経質者は放埒するauslebenようにと教えられている

・性生活の問題を社会が実際的に処理しようとしているそのやり方を

・性生活の問題を社会が実際に規制ordnenしようとしているそのやり方を

・われわれは、社会が道徳と呼ぶものには

・われわれは、社会が道義Sittlichkeitと呼ぶものには

この段落内に既出の「道義Sittsamkeit」「道徳Moral」に合わせた。

著作集ｐ３５８

・・彼らが治療を完了したのちに、自主的になって、自分の判断によって完全な性的享楽と絶対的禁欲との中間にあって、それぞれにしかるべき態度をとるなら、われわれとしてはその結果がどうであろうとも

・・彼らが治療Kurを完了したのちに、自立して、自分の裁量によって完全な放埒Auslebenと絶対的禁欲とのあいだの何らかの中庸の立場をとろうと決心するなら、われわれとしてはこの結末について

・たといその人の道徳の尺度が

・たといその人の道義の尺度が

・不道徳という危険からは

・不道義という危険からは

文庫ｐ１７０

欲求の拒否という病因的状況と（文庫）

欲求の挫折という病因的状況と（著作集）

頓挫Versagungという病因的状況と

・・みなさんは性愛の完全な享楽を認めるということによって、精神分析の治療効果を

・・みなさんは性的放埒Auslebenを認めるということによって、精神分析の療法〈テラピー〉上の作用を

・私がみなさんのこの憶測を否認している間に

・私がみなさんのこの憶測を追い放ってabweisenいる間に

・・われわれが治療効果を挙げえているのは、われわれがまさに、無意識を意識に置き換え、すなわち無意識を意識に翻訳するからなのです（著作集）

・・われわれが治療効果を挙げえているのは、われわれがまさに、無意識を意識に置き換え、すなわち無意識を意識に翻訳するからにちがいないとみなさんお考えでしょうが（文庫）

・・われわれがお役に立てるのは、無意識的なものを意識的なものに置き換えることErsetzung、すなわち無意識的なものから意識的なものへの翻訳によるにちがいないとみなさんお考えでしょうが

・無意識的なものを意識的なものに変えることによって抑圧を解消し

・無意識的なものを意識的なものへと進捗させることによって抑圧を揚棄し

・何とか解決できるに違いない正常な葛藤に変えるのです。われわれが患者の心の中に引き起こすのは

・何とか解決できるに違いない正常な葛藤に変貌verwandelnさせるのです。われわれが患者に引き起こすのは

心的過程を解消しえない

心的事象を戻しえない

・無意識の意識化、抑圧の解消、記憶欠落の充填

・無意識的なものの意識化、抑圧の揚棄、欠落の充填

文庫ｐ１７１

神経症者が健康になるということを（文庫）

神経質者が健康になるということを（著作集）

著作集が正しい。

ところが患者の心の中には

ところが患者には

このような心の内部の変化の意義を（文庫）

このような心内の変化の意義を（著作集）

このような内的変化の意義を

・・回復した神経症者は（文庫）

・・回復した神経質者は（著作集）

・・治癒した神経質者は

著作集ｐ３５９

心情生活における

心的生活における

病気の症状だけを攻撃の目標にする

病気の現れだけを攻撃点とする

文庫ｐ１７２

因果の連鎖を追求して

原因性の連鎖を追求して

この心的機構に干渉し

この伝動Getriebeに手を加え

われわれは精神分析という精神療法によって

われわれは精神療法によって

現象の根源を衝いている

現象の根をたたいている

無意識を意識に置き換えるために

無意識的なものを意識的なものに置き換えるersetzenために

文庫ｐ１７３

・それと並列するものとして受け取り

・それと並列して持つようになり

われわれはむしろこの無意識的なものを局所的に考え、患者の記憶の中でその無意識的なものが抑圧によって作りだされたその局所にそれを探し求めなければならないのです。この抑圧が除去されますと、無意識的なものを意識的なものによって代置することはすらすらとできるのです。

われわれはむしろこの無意識的なものを局所的に表象し、患者の記憶の中で、その無意識的なものが抑圧によって成立したところにそれを捜し出さなければならないのです。この抑圧は除去されるべきであり、そうすれば無意識的なものの意識的なものによる代理はすらすらと生じるのです。

著作集ｐ３６０

・われわれが取り除こうと努めているその抑圧から

・われわれが解消loesenしようと努めているその抑圧から

忌むべき欲情を抑圧するために行われる逆充当によって

忌むべき動きを抑圧するために行われる対抗充当によって

逆充当、すなわち抵抗は無意識に属するのではなく、われわれの協力者である自我に属するのであり

対抗充当、すなわち抵抗は無意識的なものに属するのではなく、われわれの協力者である自我に属するのであり

組織体としての意味

システムとしての意味

文庫ｐ１７４

抵抗が解消され、逆充当が引っ込められるだろう

抵抗が放棄aufgebenされ、逆充当が回収einziehenされるだろう

患者の欲求です

患者の志向です

期待観念を

期待表象を

著作集ｐ３６１

・抑圧されているものを示唆することによって、抵抗を克服し、抑圧を除去し、無意識的なものを意識的なものに転化するという課題を解くことが

・抑圧されているものを暗示Andeutenすることによって、抵抗を克服し、抑圧を揚棄し、無意識的なものを意識的なものに変貌verwandelnさせるという課題を解くことが

「暗示」についてAndeutungとSuggentionの訳し分けが難しいので、この章では両方に原語を付記した（ちなみにAnspielungは「ほのめかし」にしている）。

文庫ｐ１７５

逆充当を維持しようとする

対抗充当を維持しようとする

・それがおそらくわれわれの考える意味の葛藤に決着をつけるのでしょう。

・うまくいけばそれがわれわれの考える意味の葛藤に決着をつけてくれるでしょう。

かつて一度始末された過程を修正することに

かつて一度処理されたプロセスを再審Revisionすることに

最初に拒絶した瞬間から

最初に追放Abweisungした瞬間から

リビドーの要求を危険視して追放すべき理由があったのです

リビドーの要求を危険として排すachtenべき理由があったのです

いい結果に終わる

いい結果に導く

・・治療結果は

・・結果は、

・・われわれの治療方法が絶対に成功しない別の類型の疾病もあります

・・われわれの療法〈テラピー〉上の処置が絶対に成功しない別の疾病形態もあります

文庫ｐ１７６

期待観念を伝えることによって

期待表象を伝えることによって

抵抗を解消したり

抵抗を揚棄したり

あくまで感応を示さず

あくまで無感動ungeruehrtで

結び合わせて一つの妄想に作り上げていくパラノイア患者に

結び合わせていくパラノイア患者に

著作集ｐ３６２

・・彼らにはパラノイア患者より精神分析治療が通じやすいということにはならないのです。

・・彼らにはパラノイア患者よりアプローチしやすいということにはならないのです。

・この事実はまた、他の神経症の場合に可能な成功をそのすべての条件において、はたしてわれわれが本当に理解しているかどうかと疑えと命じているのです。（文庫）

・この事実はまた、他の神経症の場合に可能な成果の全ての条件を、はたしてわれわれがほんとうに理解しているのかどうかと疑えと命じているのです。（著作集）

著作集をとる

文庫ｐ１７７

・・われわれとしては、治療の際に顧慮される原動力は

・・われわれとしては、治療Kurの際に顧慮される原動力は

自分の面倒をみてくれる医師という人物に対してある特殊な関心を寄せはじめる

医師という人物に対してある特殊な関心を発達させる

・自分が病気であることさえ忘れさせかねないように見えるのです

・患者を、自分が病気であることから向きを逸らさせてablenkenいるように見えるのです

患者の方でもやはり同じようによろこんでいることを聞いて満足します

この喜びGefallenをお互いが抱いていることを聞いて満ち足りるvergenuegenのです

文庫ｐ１７８

先生を完全に信頼しております

先生を盲目的に信頼しております

著作集ｐ３６３

・・治療がもたらす啓示が意外なものであって、それが患者の心を軽くするために

・・治療Kurがもたらす開示Eroeffnungenが意外なものでありながら救済となるbefreienものであるために

・・患者はわれわれが彼に示唆するものをよく了解し、治療のために

・・患者はわれわれが彼に示唆andeutenするものをよく了解し、治療Kurのために

Andeutungは「暗示」と訳してきたが、この文脈ではSuggestionと紛らわしいのでここはそのままにした。

分析の材料となる回想や思いつきも、患者の心の中に

分析の材料となる記憶や着想も、患者に

医師はただただ満足というよりほかはないのです

医師はただただ満り足りるGenuegtuungよりほかはないのです

こういう好ましい意思の疎通ができると

こういう好ましい協調関係ができると

文庫ｐ１７９

・・治療は困難にぶつかるのです

・・手当ては困難にぶつかるのです

患者はもう何も連想が出てこないと主張します

患者はもう何も着想しないと主張します

・・患者は治療中の者ではないかのように

・・患者は治療Kur中の者ではないかのように

・・自分の心の中だけにしまっておこうと思うことに心を奪われているのです。これは治療にとっては

・・自分のためにとっておきたい事柄にとらわれているのです。これは手当てにとっては

強い情愛の気持ちを

強い情愛的感情を

・・しかしその情愛の気持ちは、医師の行動や治療中に生じた医師との関係からは

・・しかしその情愛的感情は、医師の行動や治療Kur中に生じた医師との関係からは

・この愛情がどんな形で

・この情愛がどんな形で

・むろん両当事者間の人間関係によって変わってきます

・むろん両当事者間の人間関係によります

正常な恋愛だという印象を受けます

正常な惚れ込みVerliebtheitだという印象を受けます

心の秘密を打ち明けられるような男性

親密に話せる男性

若い娘が熱を上げるのは当たり前のことだと思われましょう

若い娘が惚れ込むverliebtのは当たり前のことだと思われましょう

著作集ｐ３６４／文庫ｐ１８０

医師とのあいだに秘密な関係を結ぶことに

医師とのあいだに秘密な愛情関係を結ぶことに

しかし、そういうことは精神分析以外の世界でも起こるではありませんか

たしかに、そういうことは精神分析以外の世界でも起こります

・・治療の問題に関して

・・療法〈テラピー〉上の問題に関して

恋愛によってのみ健康になれるといつも感じていた

愛によってのみ健康になれるといつもわかっていた

・・だから治療の初めから

・・だから手当ての初めから

・・自分たちは治療の際の

・・自分たちは治療Kurの際の

文庫ｐ１８１

・・分析治療はある偶然の出来事、言いかえれば、治療の意図のなかに含まれてはいず、また、治療のために生じたのでもない出来事によって

・・分析治療Kurはある偶然の出来事、言いかえれば、治療Kurの意図のなかに含まれてはいず、また、治療Kurのために生じたのでもない出来事によって

医師に対して患者が情愛的に結びつくという

医師に対して患者が情愛的に拘束されるという

著作集ｐ３６５

われわれは感情転移と呼んでいます。治療の状況のなかでは

われわれは転移と呼んでいます。治療Kurの状況のなかでは

今後、「感情転移」はすべて同様。

・・このような感情の動き全体はどこかよそですでにあらかじめ準備されていたのであって、それが分析的治療を受ける機会に

・・このような感情の準備状態全体は、どこかよそに由来し、患者の中に準備されていたのであって、それが分析的手当てを受ける機会に

熱烈な求愛として

熱烈な愛の要求として

リビドー的欲求がやわらげられて、断ち切りがたくはあっても純粋に精神的な友情という

リビドー的志向がやわらげられて、断ち切りがたくはあっても純粋に非官能的な友情という

文庫ｐ１８２

・女性の患者と同じように医師に結びつき

・女性の患者と同じように医師に拘束され

・これらの欲動成分が別途に使用されるために顕在性同性愛が影を薄めるのに比例して、昇華された感情転移の諸形式が

・顕在性同性愛が、その欲動成分が別途に使用されるために影を薄めるのに比例して、転移の昇華された諸形式が

ここで「欲動成分」は同性愛を構成する成分を指している。　

・・感情転移は治療の初めから患者に起こっており、しばらくの間はそれが治療の仕事の

・・転移は手当ての初めから患者に起こっており、、しばらくの間はそれが作業の

文庫ｐ１８３

・やがて感情転移が抵抗に変わる場合には

・やがて転移が抵抗に転化wandelnする場合には

・・感情転移が治療に対する関係を

・・転移が治療Kurに対する関係を

著作集ｐ３６６

情愛傾向としての感情転移が強くなって

転移が情愛的指向Neigungとして強くなって

自己に対する内的反抗

それ自体に対する内的反抗

感情転移が情愛的な感情の動きではなくて、敵対的な感情の動きからなっている場合です

転移が情愛的な動きではなくて、敵対的な動きからなっている場合です

・・治療の状況には

・・治療Kurの状況には

文庫ｐ１８４

憤慨してはねつけたりするのは非常識です

憤慨して拒絶abweisenしたりするのは非常識です

君の心の中にかつて起こったことの（著作集）

あなたの心の中にかつて起こったことの（文庫）

あなたにかつて起こったことの

患者にその反復されているものをなんとか思い出すように仕向けます

患者がその反復を記憶に変貌させseine Wiederholung in Erinnerung zu verwandelnざるをえなくします

ふだんはErinnerungを記憶、Erinnernを想起と訳しているが、ここは想起のほうがよいかもしれない。

・・とにかく治療にとってきわめて強い脅威を

・・とにかく治療Kurにとってきわめて強い脅威を

心情生活の

心的生活の

・・治療が開始されたからといって

・・手当てが開始されたからといって

しかし治療が患者の心を捉えはじめると

しかしひとたび治療Kurが患者を征服bemaechtigenしてしまうと

文庫ｐ１８５

・すなわち医師との関係の中に集中されるようになります

・すなわち医師との関係に襲いかかるようになります

著作集ｐ３６７

・感情転移がこのような意義をもつようになって初めて

・ひとたび転移がこのような意義をもつようになると、

それに代わって新しく作り出され

それに置き換わってersetzen新しく作り出され

・・この新しい人為的神経症を克服することは、治療の目標であるもとの病気を除去することであり、われわれの治療上の課題を解決する

・・この新しい人為的神経症を制圧Bewaeltigungすることは、治療Kurのなかに持ち込まれた疾病を処理することであり、われわれの療法〈テラピー〉上の課題を解決する

抑圧されている欲動の作用を受けなくなった人間は

抑圧されている欲動の動きの作用を受けなくなった人間は

・・感情転移が治療にとって

・・転移が治療Kurにとって

これらの神経症の症状となって現れている抑圧された衝動が

これらの神経症の症状となって現れている禁圧された動きが

文庫ｐ１８６

症状がリビドーの代償的満足としての意義を持つ

症状がリビドーの代理満足としての意義を持つ

患者に暴露された抵抗をもって正常な葛藤を戦い抜かねばならないような

患者に暴露された抵抗とのあいだの正常な葛藤を戦い抜かねばならないような

著作集ｐ３６１、文庫ｐ１７５の「正常な葛藤」を参照。

・・治癒をもたらすという意味での決断に影響を与える強力な原動力を

・・回復Genesungをもたらすという意味での決断に影響を与える強力な切迫Antriebを

「回復」はこの章で何カ所から出てきた訳に合わせた。

著作集ｐ３６８

医師の報告や見解に対する信頼に変化します

医師の報告や見解に対する信頼に変換unsetzenされます

信頼とは愛から出たものであり

信頼とは愛の派生物であり

文庫ｐ１８７

人間を感化しうる能力には

人間へ影響しうる能力には

リビドーをいろいろな人物にも充当する能力は

リビドー的対象備給をいろいろな人物に向ける能力は

なんらかの形で暗示を受けうる

なんらかの形で暗示Suggestionを受けうる

このあとしばらく暗示という訳語が頻出するが、原語はSuggestionである。

著作集ｐ３６９／文庫ｐ１８８

なんのために過去を回想するというまわり道をしたり

なんのために過去のさまざまな記憶を経るというまわり道をしたり

さまざまな歪みを解釈し、翻訳しなおしたり

さまざまな歪曲を解釈して翻訳し戻したり

文庫ｐ１８９

・・われわれの治療努力が

・・われわれの療法〈テラピー〉上の努力が

なんの感化をも受けないのです

なんの影響をも受けないのです

・彼らはすでに幾度も独力でたちなおろうとする試みをしているのであり

・しばしば彼らはすでに幾度も独力で治癒の試みをしているのであり

著作集ｐ３７０

対象リビドーが自我リビドーに変ぜしめられたにちがいない

対象リビドーが自我リビドーに変換unsetzenされたにちがいない

・・治療を試みているときの彼らの行動は

・・療法〈テラピー〉上の試みの際の彼らの態度は

２００１年１１月１１日作成／２００２年１２月３１日増補改訂（追加分は行頭の「・」で表記）／２００６年３月２９日「Kur」の訳語を修正