フロイト著作集第２巻
翻訳正誤表（気づいたところだけ）
『夢判断』
著作集ｐ１２５下段（新潮文庫上巻ｐ１９２）
（原註）「美人のお尻」は「モデルになる」の意。ゲーテに、「お尻がなければ貴人もモデルに坐れまい」とある。
（原註）画家の前に座る、の意。ゲーテに、「お尻がなければ貴人も坐れまい」とある。
ｐ２３７下段（新潮文庫上巻ｐ３６７）
ちょっとした料理店がある（これは実際と符合しない）。その料理店では芝居をやっている。
ちょっとした休憩宿 Einkehrwirtshaus がある（これは実際と符合しない）。その休憩宿では芝居をやっている。
これは、直訳すると「（食事のとれる）立ち寄り宿屋」です。意訳すれば「お食事処」「休憩所」「茶屋」といったところでしょうか。この語には患者の連想において重要な「宿wirtshaus」という語が含まれているので、この語を残してここでは「休憩宿」としておきます。
ｐ２３８上段
登りの辛さはひどくはっきりと感じられたので
登り Steigen の辛さはひどくはっきりと感じられたので
呼吸困難のもとに行われた難儀な登行は
呼吸困難のもとに行われた難儀な登行 Steigen は
最初は難渋だったがしまいには楽になった
最初は登ること Steigen が難渋だったがしまいには楽になった
ｐ２３８下段
ある男が恋人を抱えて階段を登ってゆく
ある男が恋人を抱えて階段を登ってゆく steigen
夢のほうでは最初が辛くて
夢のほうでは登り Steigen の最初が辛くて
ｐ２３９上段
その広告には幾段かから成っている 階段の絵が描かれていたという
その広告には幾段かから成っている 階段Stiege の絵が描かれていたという
しかしＸ通りには料理店はない
Ｘ通りに宿屋 Wirthaus はない
ヴィーン郊外の小さなホテルに投宿（車を降りる）した
〈Ｘ通りの〉近くの小さなホテルに泊まったabsteigen
ホテルを出て馬車に乗り
ホテルから去るにあたって
こんなところに泊まれるもんですか
こんなところには 泊まってabsteigen いられません
実はほんの飯屋（小料理屋）なんですからね
実はほんの休憩宿 Einkehrwirtshaus なんですからね
この宿という一語は
この休憩宿という一語は
ｐ２３９下段
むっちり光った実が二つ。／ほしさに登って行ってみた。
むっちり光った実が二つ。／ほしさに登って行って hinansteigen みた。
階段Stiege 泊まったabsteigen 泊まってabsteigen 登って行って hinansteigen という語の系列がイタリックで強調され、この患者の連想の流れと圧縮の過程が示されています。
そりゃ天国の昔から／こなさん方の好きな物／女子に生まれてきた甲斐に／私の庭にもなっている
天国の昔から／君たちが欲望してやまない林檎の実／うれしいことに／私の庭にもなっている
あえて直訳にします。
このように分析してみると、この夢は幼年時代の一印象に関係を持っていることがよくわかる
分析の脈絡からして我々は、夢は幼年時代の一印象に起因すると仮定せねばならなかった
乳母の乳房は事実上飯屋である
乳母の乳房は事実上休憩宿である
Ｐ２４０上段
この患者が丘を登ってゆくくだりもまた
この患者が丘を登ってゆく Steigen くだりもまた
新潮文庫上巻ｐ３０９「裸で困惑する夢」から
文庫ｐ３０９
本来の裸体夢というのは
われわれの関心をひく裸体夢というのは
文庫ｐ３１０
裸体と抑制がこのように結びつく場合にのみ、この裸体夢は類型夢となるのである
この連関においてのみ、この夢は類型的なのである
羞恥の情から発する不快な気持
羞恥という性質を持った苦痛感覚
その他人はどんな顔つきをしているか、それも一向にはっきりしない。
その他人はほぼつねに見知らぬ人で、どんな顔つきをしているかもはっきりしない。
ｐ３１１
この矛盾は夢の中に頻繁に出てくる。
こうした矛盾は夢の中に頻繁に出てくるものである。
この風俗壊乱という点は願望充足によって取り除かれているのである。
この失礼という点は願望充足によって除去されているのである。
おもしろい証拠がひとつある
おもしろい例証がひとつある
不可解な夢内容が、ひとつの刺激となってある表現形式を発明する、この表現形式を用いるならば、記憶以前にある状況が意味深いものになってくる
不可解な夢内容がきっかけを与えて、ある着衣〈＝扮装Einkleidung〉を創出させた。この着衣〈＝扮装Einkleidung〉を被せると、〈不可解な夢内容を構成している〉記憶に直面した状況が、明瞭な意味を持ったものになるようにである。
ｐ３１２
最後的な夢形成の一要因として承認されるのを見るであろう
最終的な夢形成の一要因として認めるべきであるとわかるであろう
同一の心理個性の内部において
同一の心的人格の内部において
この童話中のお説教的な傾向は、潜在内容においては社会的に許すべからざる、抑圧の犠牲に供せられた願望が肝心要のものなのだという、漠然たる自覚を遠回しに示しているのである。
〈この童話中では子供がその役目を担っている〉道徳的傾向が、社会的に禁じられた、抑圧の犠牲となった願望が潜在内容において扱われている、という漠然たる知を暴くのである。
ｐ３１３
要求しているらしいと考えている。
要求しているらしいという推測を述べた。
ｐ３１４
夢というものはまさに決して単純な思い出しではないのである
夢というものはまさに決して単純な記憶ではないのである
ｐ３１５
第二の心的組織によって拒否されているところの露出場面
第二の心的組織によって排除verwerfenされているところの露出場面
ｐ３１７
意識にのぼせられることの可能な、一点非の打ちどころなき諸々の願望の背後には、夢の中においてこそ、抑圧されて許すべからざるものとなっている幼児願望の数々が頭をもたげてくるのであって
意識化可能な、一点非の打ちどころなき諸々の願望の背後に、夢の中において、禁圧unterdruckenされて許すべからざるunerlaubtものとなっている幼児願望の数々が頭をもたげてくるのであって
時間的接近から具体的関連を類推する
時間的接近から事項の関連を類推する
ｐ３１８
私の意識以前の幼児期の乳母の権化（化身）として
私の前歴史的幼児期の乳母の受肉として
新潮文庫上巻ｐ３５２「試験の夢」から
卒業試験を受けて、高等中学校の過程を終了した人は誰もいつまでしつっこく試験の内容とする不安な夢を見る。試験に落第してもう一遍原級を繰り返さなければならないという例の夢である。ドクターの学位を持っている人にはこれが少し形を変え、自分が口述試験に合格しないことになっている。
卒業試験を受けて、高等中学校の過程を終了した人は誰でも、試験を内容とする不安な夢をいつまでもしつっこく見るといって嘆く。試験に落第した、原級を繰り返さなければならない、などという夢である。ドクターの学位を持っている人の場合、この類型夢は少し形を変え、自分が口述試験にまだ合格していないという類型夢に置き換わる。
さてこの試験に落第する夢は、われわれが幼年時代に、してはならないことをして受けた罰への消し去りがたい記憶なのであって、それがわれわれの修業期の二つの接合点において、つまり厳格な試験の『怒りの日なり、彼の日は』において、われわれの心の中に再び新たなものになってくるのである。
さて、我われの修業期の二つの接合点において、つまり厳格な試験の『怒りの日なり、彼の日は』において、我われの内部に再び新たなものになったのは、我われが幼年時代に、してはならないことをして受けた罰への消し去りがたい記憶なのである。
神経症患者の「試験恐怖」もまた幼児期の不安恐怖に結びついて増大する。
神経症患者の「試験不安」もまた幼児期の不安に結びついて増大する。
不安な試験夢は、そういうわけで、大きな不安が不当なものであったことが知れ、事の成行きによって不安が解消されたような過去の一事件（訳注 例えば、試験）を捜し求めているのかもしれない。
不安な試験夢は、大きな不安が不当なものであったことが知れ、事の成り行きによって不安が解消されたような機会を、過去から探し出したのかもしれない。
しかし、われわれが夢のせいにしている不安恐怖は、日中体験残浮に発したものなのである。
しかし、我われが夢のせいにしている不安のほうは、日中体験残浮に発したものなのである。
いずれも全然自信がないままに試験に臨んだのであったが、
いずれも、根拠十分な不安を抱いて試験に臨んだのであったが、
性的試煉
性的な能力テスト
２０００年４月１６日作成（２００１年５月２８日増補）
