フロイト著作集第３巻
『無気味なもの』 翻訳正誤表（気づいたところだけ）
ｐ３２７
彼は心の営みの別の層を相手にしているのであって
彼は心的生活の別の層で作業しているのであって
あの目標からはばまれた、抑圧された
目標を抑制された、弱められた
「不安なもの」の内部においてとくに
「不安がらせるものAengstlichen」の内部において
ｐ３２８
この感情価にたいする感受性が
この感情の質にたいする感受性が
特別な鈍感さを嘆かざるをえない
特別な鈍感さを自ら告発せざるをえない
無気味な思いをさせされたようなこともなければ、無気味なものに出会うこともなく過ごしてきた
無気味なものの印象をもたらすようなものを体験することも、知ることもなく過ごしてきた
ｐ３２９
「気味のわるい」は
タイトルにある「無気味」と同じ語である。このあともしばしば二通りに訳し分けられているが、理由は分からない。
ｐ３３４
heimlichは隠す行為の動詞の対をなす
heimlichは隠す行為の動詞に付加される
とくにはっきりと無気味な感じを
とくにはっきりと無気味な感情を
ｐ３３５
自動的な −機械的な− 動きの予感が
自動的な −機械的な− プロセスの予感が
しかも、読者にただちにこの事態を探求しはっきりさせたいというような気が起こらないように（なぜといって、はっきりしてしまったら、よくいわれるように、特別な感情的効果はすぐ消滅してしまうから）このあいまいさが直接読者の注意力の焦点にならないようにしておくことである。
しかも、このあいまいさが直接読者の注意力の焦点にならないようにして、読者がただちにこの事態を探求しはっきりさせたいという気を起こらないようにしておくこと（なぜといって、はっきりしてしまったら、よくいわれるように、特別な感情的効果はすぐ消滅してしまうから）である。
ｐ３３６
どうかすると母親は
幾晩かには、母親は
いつもそんなものはほんとうはいはしませんよと否定するのだが
いつもそんなものは決まり文句に出てくるだけですよと非認leugnenするのだが
爆発によって殺される
爆発によって死ぬ
ｐ３３８
一般にその疑惑は問題にならない
そもそもその疑惑は問題にならない
これは現実世界なのか、作者お気に入りの空想世界なのかを、我々に推測させない
我々が導かれたのは現実世界なのか、作者の恣意的な空想世界なのかを、我々に察知させない
「恣意的な」は次頁の下段では「気儘な」と訳されている。
それは作者の勝手なのであって
それは作者の権利なのであって
われわれは作者が前提としたその世界をあたかも現実世界のごとくに
われわれは描写の前提となるその世界をあたかも現実のごとくに
ここに示されているものは、合理主義的優越のうちにその真の、おもしろくも何ともない実情を認めるといったような精神錯乱者の空想像ではないことを今われわれは知っているし − また無気味さは、そういうふうに説明されたからといっていささかも害なわれることはない
今となっては、我々の前にあるのは、精神錯乱者の空想形成物 −そのような形成物の背後には、合理主義的優越のうちにその写実的な事項関係を認めうる− ではないはずのものであることを知っているし − また無気味さは、このような解明によっていささかも害なわれることはない
子どもが持つ不安の中に、目を害いあるいは失うという、恐ろしい不安があることを我々に教えている。この不安な気持ちは
目を害いあるいは失うという、子どもが持つ恐ろしい不安があることを我々に教えている。この不安がりようは
ｐ３３９
去勢の罰にたいする軽減にすぎない
去勢の罰にたいする減刑にすぎない
それにふさわしい用心を持って取り扱われているのは
それにふさわしい不安でもって守られているのは
これに関する疑念は
これ以上の疑念は
失明不安の去勢への関係を否認すると、気儘な無意味なものに
失明不安の去勢への関係を拒否ablehnenすると、恣意的な無意味なことに
両立性によって二つの反対物に分裂せしめられた「父の姿」である。
両価性によって二つの客体に分解せしめられた「父のイマーゴ」である。
このように二度もいっしょにいるところからみれば、彼らが父の姿の
このように二つの共通性からみれば、彼らが父のイマーゴの
ｐ３４０
試しに彼の手足をひねり回してみた
試しに彼の手足をねじって外してみた
オリンピアにたいする彼の自分ではどうにもならないほどに激しい恋心の中に表現されている。我々はこの恋愛を自己陶酔的恋愛とよんでよかろう。
オリンピアにたいする彼の不合理に強迫的な愛の中に表現されている。我々はこの愛をナルシシズム的な愛とよんでよかろう。
実際の愛の対象から
現実的な愛の対象から
ｐ３４１
第二の自我の
ドッペルゲンゲルの
前の行の「二重自我」も「ドッペルゲンゲル」。４行あとの「（二重自我）」という括弧は訳者による気儘な補足であり、削除すべきである。
「死の偉力を断固として否定すること」
「死の偉力を断固として打ち消すことDementierung」
死滅に対して防御するための
死滅に対して防衛するための
ｐ３４２
無限の自己愛、原始的自己愛の
無限の自己愛Selbstliebe、一次ナルシシズムの
ドッペルゲンゲルという観念はこの原始的自己愛とともに
ドッペルゲンゲルの表象はこの原初的ナルシシズムとともに
この段落内の「観念」は「表象」に変更。
爾余の自我と対立する特殊な一部分が
爾余の自我と対立する特殊な審級が
自己批評の
自己批判の
以下すべて同様
この一部分が孤立し、爾余の自我から分離されて
この審級が孤立し、自我から分離されて
爾余の自我をまるで他人のもののように扱いうるような自我の一部分が
爾余の自我をまるで対象のように扱いうるような審級が
すでに克服された自己愛に属する
すでに克服されたナルシシズムに属する
批評的自我と爾余の自我との間の分裂
批判的審級と自我の残余との間の二分割
無意識に抑圧されたもの
無意識的な抑圧物
自我批判によって非とされたものの中には、よく抑圧されたものの子孫が存在する
自我批判によって排除されたものの中には、よく抑圧されたものの派生物が存在する
執着しているところ
執着しているところの
一切の自我の目標
一切の自我の志向
意志の自由
自由意志
あらゆる抑圧された意志決定
あらゆる禁圧された意志決定
ｐ３４３
この内容のうちどれ一つとして、これを何か無縁なるものとして自我から外へ向かって投影させるあの防御努力を説明できそうなものはないと
この内容のうちどれ一つとして、その内容を何か無縁なるものとして自我から外へ向かって投影するあの防衛努力を説明できないと
時代を逆行する
時代を退行する
外界や他の諸自我
外界や他者
同種のものの繰り返しというこの契機を
同種のものの繰り返しという契機を
あの途方に暮れたような感じを
あのよるべなさHilflosigkeitを
途方に暮れたような感じ、無気味な感じを
よるべなさと無気味な感情を
ｐ３４４
欲動活動から発する
欲動の動きから発する
幼児の諸行為のうちには
幼児の志向のうちには
精神分析過程の一段階を
精神分析の経過の一部を
ｐ３４５
神々の嫉妬を招く」という考えは
神々の羨望を恐れねばならないから」という回答は
他人の嫉妬を恐れるあまり
他人の羨望を恐れるあまり
「嫉妬」については以下すべて同様。
世界を人間の霊で充満せしめることによって、また自己自身の心の内部の出来事を自己陶酔的に過大評価することによって、観念の万能およびその上に打ち立てられた呪術のテクニックによって、また念入りに段階づけられた魔法の諸力を他の人物や事物（マナ）に配分することによって、あるいはまたこの発展段階にある無制限の自己愛が、それをもって、現実からの間違えようのない抗議に抵抗するところの、あの創造物の全てによって特徴づけられている、あのアニミズムである。
この世界観は次にあげる幾つかの点で際立っている。世界を人間の霊で充満せしめること、また自己自身の心的事象をナルシシズム的に過大評価すること、観念の万能およびその上に打ち立てられた呪術のテクニック、また念入りに段階づけられた魔法の諸力を他の人物や事物（マナ）に配分すること、あるいはまたこの発展段階にある無制限のナルシシズムが、現実からの間違えようのない抗議に抵抗するために用いる、あの創造物の全て。
ｐ３４７
おそらくはそのもっとも強い例をもって
おそらくはそのもっとも強いこの例をもって
自分自身が死ぬことを、ほとんど表象しえないでいる
自分自身が死すべきことの表象には、ほとんど余地を与ええないでいる
ｐ３４８
このように死にたいする関係が
このように死にたいする構えが
そしてもともとひどくあいまいな、両立的な死者にたいする感情関係は、心的生活の上層諸部分にとっては、敬虔という、はっきりした感情関係へと弱められているからである
そしてもともとひどく二義的な、両価的な死者にたいする感情の構えは、心的生活の上層諸部分にとっては、敬虔という、一義的なものへと弱められているからである
ｐ３４９
もっとも無気味なものとして考えていると思われるのは
もっとも無気味なものとして考えていると思われる表象は
むしろある快楽の味を持っているもの
むしろある好ましいものに発している
ｐ３５０
無気味な印象はきわめて明瞭に感じられた
無気味な作用はきわめて明瞭に感じられた
神経症患者が、女の性器は
神経症の男が、女の性器は
抑圧された願望活動や
抑圧された願望の動きや
ｐ３５１
この話は全然無気味な印象を喚び起こさない
この話は全然無気味な作用を喚び起こさない
非常に気味の悪い印象を与える
非常に無気味に作用する
非常に無気味なものとした
非常に無気味な表象と学んだ
きわめて疑わしい、気味の悪い印象を与える
疑いなく無気味な作用を与える
ｐ３５２
実際に経験する無気味なものと、たんに思い浮かべるだけの
体験する無気味なものと、たんに表象するだけの
新しい確信を完全にわがものにしていない
新しい確信を完全に確実とは感じていない
自分の存在の確証される機会を
自分の立証される機会を
振り棄てられた確信をたしかめるような
振り棄てられた確信を立証するような
ｐ３５３
あの原始的反動の
あの太古的反応の
たいていはこの第一のグループに属している
たいていは（先の）第一のグループに属している
ふたたびたしかめられるように見える時である
ふたたび立証されるように見える時である
ｐ３５４
その内容が現実による吟味に
その内容が現実照合Realitaetspruefungに
ｐ３５５
現実世界における我々自身と同じく完全な実在物ででもあるかのように取り扱うからである。
物的現実における我々自身と同じく完全な実在物ででもあるかのように取り扱うからである。よってこれもまた、無気味なものの現れない一例となる。
迷信に売りつける
迷信に我々を売り飛ばす
われわれの反逆に肩すかしを食わせ
われわれの反逆から逃れ
長いことわれわれに推測させないでおく
長いことわれわれに察知させないでおく
実際の体験においては現れていないような
実際の体験においては現れないような
もっと抵抗力を持っていて
もっと耐性があり
ｐ３５６
きわめて大きな抵抗力を
きわめて大きな耐性を
前のとは別の状況によって
前のとは別の布置によって
素材からまったく
素材選択からまったく
２００３年８月１８日作成
