フロイト著作集第5巻
「呪物崇拝」
p391上段
・ひとつの呪物にしたがって物事の選択をしている
・ひとつのフェティッシュに支配された対象選択を行っている
呪物(=物神)=フェティッシュ、呪物崇拝=フェティシズム、呪物崇拝者=フェティシスト。
・まったく満足しており
・まったく満ちたりており
p391下段
・呪物崇拝的な条件にしていた
・フェティシズム的な条件に高めていた
・後にドイツにやってきたが、そのときには母国語はほとんど完全に忘れていた
・後にドイツにやってきたが、そこで母国語はほとんど完全に忘れてしまった
・他人には分からぬような特殊な輝きを付け加えられて
・他人には知覚すべき特殊なGlanzlicht〈つやの輝き=まなざしのスポットライト〉を付け加えられて
p392上段
・一片のナルシシズムがこれに抵抗する
・一片のナルシシズムがこれに逆らう
・女性にはまったく陰茎がない、という自分で見た事実を認めるのを、拒んでいた
・女性はペニスを所有していない、という自分の知覚を、拒んでいた
この論文では、ファルスは陰茎、ペニスは男根と訳されているが、この箇所と、論文の最後の部分の二箇所でこの原則が破られる。
p392下段
・似たような恐慌は、後に大人になってからも、王座と祭壇が危殆に瀕していると叫ばれるとき、おそらく体験されるであろう。そしてやはりおなじような非論理的な帰結にいたるだろう。
・似たようなパニックは、後に大人になってからも、叫び声が発せられるときや、王座と祭壇が危殆に瀕しているとき、おそらく体験されるであろう。そしてやはりおなじような非論理的な結論にいたるだろう。
・少年は女性に男根がないということの承認を「暗点化する」というだろう。
・少年は女性におけるペニス欠如の知覚を「暗点化する」というだろう。
・一つの新しい術語は、やはり一つの新しい事実を記述し、特徴づけるとき、はじめてその資格をえる。ここで、われわれの精神分析用語のなかで最も古い「抑圧」という言葉が、すでにこのような病的経過を指している、ということはさしあたりもちださない。
・一つの新しい術語は、やはり一つの新しい事実を記述する場合や際立たせるような場合に、はじめてその資格をえる。しかしさしあたりここにはそのようなものはない。われわれの精神分析用語のなかで最も古いものに属する「抑圧」という言葉が、すでにこのような病的事象を指しているからである。
・「抑圧」は感情のほうにとっておくつもりなら
・「抑圧」は情動のほうにとっておくつもりなら
p393上段
・欲せざる知覚の重みと反対願望の強さとの葛藤のなかで、小児は、無意識の思考法則の支配のもとでのみ可能な −一次過程− 一つの妥協にいたりつく
・望まれざる知覚の重みと反対願望の強さとの葛藤のなかで、小児は、無意識的思考法則 −一次過程− の支配のもとでのみ可能な一つの妥協にいたりつく
・去勢への恐れがこの代理物を作りだしたとき、一つの記念物を置いたからである
・去勢の忌避がこの代理物を作りだしたとき、一つの遺物を置いたからである
・現実の女性性器に対する
・実際の女性性器に対する
・女性に女性が性的対象となるような性格をあたえること
・女性に、なんとか性的対象でいられるような性格をあたえること
・まだ他の点で性器代理物が非常に役立っていると考えている
・それ以外にも性器代理物の利益を享受している
p393下段
・確かな根拠があるということを付言して、私自身の正しいことを断っておく
・確かな根拠を認めなければならないことを付言して、私自身の誤りを正しておく
・精神病の精神分析的解釈を述べることからできあがったものではなく、発展および神経症形成の過程にはまったく用いられない術語である
・精神分析的解釈を精神病にも翻訳することからできあがったものではなく、発達や神経症形成の諸事象にはまったく適用できない術語である
・女性性器を見たさいの去勢恐怖は
・女性性器を見たさいの去勢の驚愕は
・それで満足しなければならず
・それで良しとしなければならず
・やはり男根の象徴となるような器官や物が選ばれる
・やはりいつでも象徴としてペニスの代わりを務めるような器官や対象が選ばれる
p394上段
・決定的でないことも確かである
・明らかではないことも確かである
・かえってある過程が抑止されるように見える
・かえってある事象が遵守されるようにみえる
・外傷性健忘のさいの想起の停止を思わせる
・外傷性健忘のさいの記憶の停止を思わせる
・関心が中途半端でとまってしまったような状態をつづけ、あの不気味な外傷をあたえたものの最終的印象といったようなものが、呪物としてとらえられる
・関心が中途半端でとまってしまったような状態をつづけ、あの不気味な外傷的印象の直前の印象が、フェティッシュとして保持される
・注意深く探っているからである
・注意深く探っていたからである
・女性の性器に対する恐怖には
・女性の性器に対する驚愕には
・外傷の想起を仮定して
・外傷の記憶を仮定して
p394下段
・エスの一部を圧えている
・エスの一部を禁圧している
・自我がエスによって引きさかれている
・自我がエスのなすがままになっている
・女性の去勢という不快な事実
・女性の去勢という不愉快な事実
・確かにまだ一つ、方策が残っている。というのは私の公式は、何より心的装置のなかで高度な相剋のあるさいに、実証する必要があったのである。また大人の場合には、重い障害という罰を受けねばならぬようなことが、小児にも認められるかもしれない。
・確かにまだ一つ、逃げ道が残っていた。つまり私の公式は、何より心的装置のなかで高次の分化がある場合にはじめて保持されるべきものであった。また大人の場合には重い障害という罰を受けねばならぬようなことが、小児には許されているのかもしれなかった。
p395上段
・つまりこの青年たちは、ふたりとも、呪物崇拝者が女性の去勢に対してするようには、その父の死を「暗点化」してはいなかったことが、明らかになったのである。
・つまりこの青年たちは、ふたりとも、フェティシストが女性の去勢を「暗点化」していないのと同様に、その父の死を「暗点化」してはいなかったことが明らかになったのである。
・彼らの心的生活のなかの一つの流れに過ぎなかった。また他に、このような事実を完全にうまく処理していたある女性もあった。すなわち、願望にあった条件と、現実にあった条件とが、互いに併存していたのである
・彼らの心的生活のなかの一つの流れに過ぎなかった。他の流れは、このような事実を完全にうまく処理していた。すなわち、願望にあった体制と、現実にあった体制とが、互いに併存していたのである
・その中程度の強迫神経症
・その治療困難な強迫神経症
・分裂した考え方
・二分した体制
p395下段
・非常にうまくできている例では、それは呪物そのもので、その構造のなかでは、去勢の否認も支持も同じように受け入れられている
・非常にうまくできている例では、まさにフェティッシュという建築物が、去勢の否認と支持の両者に対して門戸を開いている
・これら可能性は、子供のころ彫像の無花果の葉が手がかりとなってえられたこの帯の裏に、
・これらの可能性は −子供のころ見た彫像の無花果の葉にその萌芽がみられた− この帯の裏に、
・このような、矛盾したものに二重に結びついている呪物が
・このような、対立物によって二重に結びつけられたフェティッシュが
・現実であれ空想のなかであれ
・実際上であれ空想のなかであれ
・分裂性が現れている
・二分性が現れている
・呪物を扱うさいの愛撫と敵視は
・フェティッシュを扱うさいの情愛と敵視は
p396下段
・終りに、劣等器官の典型が、実際上の女性の小さい男根、クリトリスであるように、呪物の典型が男子の陰茎であることをはっきり述べておいてよいと思う。
・終わりに、劣等器官の正常モデルが、現実的な女性の小さいペニス、クリトリスであるように、フェティッシュの正常モデルが男子のペニスであることをはっきり述べておいてよいと思う。
2000年5月30日作成