フロイト著作集第5巻

ざっとみた範囲での翻訳正誤表

『幼児期の性理論について』

 

p95

第一には小児の表出や欲動的な行動の

第一には小児の表出や欲動の

 

はっきりと意識して覚えていて回想ができて語ったものであり

意識的に記憶の中に持っていて述べてくれるものであり

 

構成および意識的なものに反訳された無意識の回想である

構築、および意識的なものに翻訳された無意識的記憶である

 

小児の性活動に対して示す成人の振る舞いによっても裏づけられる

小児の性活動に対して示す成人の振る舞いに理由がある

 

注意してみるに値するものだったろうと思われたようなものの表出しているものをも圧服してしまうのである

注意してみるに値するものであったかもしれない表出物をも禁圧してしまうのである

 

小児期の思い出として意識裡にいだいているものについて

意識的な幼児期記憶について

 

過去を振り返ってみるときに起こりうるような歪曲を

過去を振り返ってみるときに起こりうる誤謬を

 

p96

教育からくる圧力や小児の性の欲動の強さがさまざまであることは

小児の性の欲動の強さがさまざまであることや、教育からくる圧迫は

 

神経症者というものは退行的な素因によって

神経症者というものは変質degenerative的な素質によって

 

その人の小児期の生活から他の(正常な)人の小児期について結論を出すことはつつしむべきであるという非難に対してはそのままにしておくわけにはいかぬと思っている

その人の小児期の生活から他の人の小児期について結論を出すことは禁じるuntersagenべきであるという抗議は、さして重大なものとは思っていない

 

はっきりと区別できるものではなく、またその小児期についても、後年になっても神経症になることのなかったひとびとのそれと区別できないひとびとなのである

正常人からはっきりと区別できるものではなく、またその小児期は、後年になっても神経症になることのなかったひとびとのそれと必ずしも容易には区別できないのである

 

実際に目につくような障害なしに

実際にpraktisch〈=実践上、実生活上〉明らかな損害Schadなしに

 

神経質のひとではこのコンプレックスを抑えつけるためには

神経質のひとではこのコンプレックスを禁圧するためには

 

すなわち性的欲動を普通のひとびとよりも早期に表明する傾向を体質的に持っているということは非常によくあることなので、ともあれ、他の小児たちについてのあまり鋭くない観察から得られるであろうよりもより多くのものを、よりきわだった姿で、小児の性的活動についてより明確に認めさせるということはあるだろうとは思う

すなわち性的活動を時期尚早に表出する傾向を体質に持っているということは非常によくあることなので、他の小児たちについてわれわれのどのみちあまり鋭くない観察力から得られるであろうよりも、小児の性的活動についての多くのものを、より鮮明により明白に認めさせるということはあるだろう

 

p97

ハヴロックエリスの先例にならって健康な成人の小児期の回想を大事に集録してみたうえではじめて評価すべきものであろうと思う

ひとびとがハヴロックエリスの先例にならって、健康な成人の小児期の記憶を集録に値するものとして評価するようになってはじめてわかってくるものであろうと思う

 

それは神経症者の心の中では

それは神経症の内部では

 

われわれがわれわれの身体性を否認し

われわれがわれわれの身体性を断念し

 

他の点ではひどく似通っていながら外見上の特色だけによってその相違点がつよくうちだされているような二つの性別のものが存在するということだけが注目をひく

他の点ではひどく似通っていながら最も外面的な徴候によってその相違を強調している二つの性別が存在するということが、なによりも注目をひく

最も外面的な徴候とは顔貌や衣服のことか。

 

自分たちの探求の帰着として

自分たちの探求の解法Ausgangとして

 

小児はその生涯について思いをはせてみるかぎり

小児は自らの生涯について想起しうるかぎり

 

はじめて自分を圧倒してしまうような自己追求的な欲動の刺激によって

はじめて自分を支配してしまうような自己追求的な欲動によって

 

p98

小児の感情生活をかき立てる働きをし

小児の感情生活を賦活する作用をし

 

鸛がこの子を連れて帰ってくれればよいがという願望などのなかに鬱を散じるし、時としては揺籠のなかに無援のままに坐っている幼児に

鸛がこの子を連れて帰ってくれればよいがという願望などのなかで溜飲を下げるし、時としては揺籠のなかに無援のままにhilflos〈=よるべなく〉坐っている幼児に

 

もっと年をとってからでは同胞が外に出ている時などにはどこかで彼を見つけたりできたとすれば、遊び友達を欲しいという気持ちが優位をしめることもある

もっと年をとってからでは、同胞が外に出ている時などに、どこかに遊び友達を見つけることができたとすれば、遊び友達に対する願望が優位をしめることもある

 

この感情と憂慮に力づけられて

この感情と関心Sorgeに誘発されて

 

小児の思惟はこの刺激鼓舞からはただちに自由になり

小児の思惟はこの誘発からはただちに自由になり

 

好奇心に対する叱責か

知的欲望に対する叱責か

 

p99

最初の「心的コンフリクト」を体験する機縁をもったことにもなる。このコンフリクトのなかで子どもには本能的に気に入っているのに、大人どもからみれば「正しく」ない意見は、大人たちの権威によって支持されるような別の反対意見に変わってしまうのである

最初の「心的葛藤」の機縁を体験したことにもなる。というのはつまり、子どもには欲動的に好ましく感じられるのに、大人どもからみれば「正しく」ない意見は、「大人たち」の権威によって支持されるような別の意見と対立関係に陥ってしまうのである

「コンフリクト」は今後も「葛藤」に変更してよいだろう。

 

探求の作業によって新しい証明がもたらされているのに、それを容認してはならないとされる意見は圧迫された「無意識」のものとなるのである

探求の作業によって〈それを裏づける〉新たな証拠がもたらされているのに、その証拠を考慮に入れてはならないとされる意見は、禁圧された「無意識的な」ものとなるのである

 

神経症の核心となるコンプレクスはこのようにして成立するようになる

神経症の核心となるコンプレクスはこのようにして構成されるようになる

 

また小児自身の性愛状態からいやおうなしにくる誤った理論によって抑えられてしまうのである

また小児自身の性的状態からいやおうなしにくる誤った理論によって抑制されてしまうのである

 

p100

自分に似た人物でこのもっとも大切な部分を持たないようなひとを想像することは

自分に似た人物でこのもっとも大切な部分を持たないようなひとを表象することは

 

自分の見たことを曲げてとるほどの

知覚をも屈服させるほどの

 

このペニスがないところを見てはいないのだ。そして、慰めかつとりなしでもするように、あれはまだ小さいだけだから、症状が大きくなればそれもそのときには大きくなるのだと語りかけるのが通例である

このペニスの欠落をけっして認めない。そして、慰めかつ辻褄合わせでもするように、あれはまだ小さいだけだから、症状が大きくなればそれもそのときには大きくなるのだと語るのが通例である

 

実際に自然がゆるした半陰陽の性器の実物は

実際に自然がゆるした半陰陽の性器の形成物は

 

p101

ペニスを持つ女性という観念が小児のなかで「固定」化してしまうと

ペニスを持つ女性という表象が小児のなかで「固着」してしまうと

 

男性のなかに求めるようになるのである。

男性たちのなかに求めるようになるのである。

 

小児期の生活のなかで別に何かある印象深いことを知っていれば、それと結びついてこの女性は

実際の女性は、小児期の生活のなかで別の印象に結びつくことによって

 

快感を感じており

快感を生み出しており

 

さてそこでこの脅かしを想い出させるのは後年になって認知し

さてそこでこの脅かしを想い出させるのは後年になって知覚し

 

この男性くさい性愛を

この男性的な性を

 

抑圧からの結果があまりに強すぎるために、その効果の一部分をヒステリー性の代理形成によって片づけられるようになるかである

生じた抑圧があまりに強すぎるために、その効果は、部分的にヒステリー性の代理形成によって揚棄されるかである

 

p102

少女はひけ目があると感じるし

少女は不当に冷遇されているbenachteiligtと感じるし

 

子ども自身がどう説明してよいかわからない衝動力は

子ども自身がどう解釈してよいかわからない切迫Antriebが

 

乱暴な行動をしてみたい暗い衝動、襲撃したり、打ち壊したり、穴ならば何でもよいからひきあけてみたいという暗い衝動である

乱暴な行動、襲撃したり打ち壊したりしたい衝動が、どこかにひとつの穴を切り開く〈=陰部に限らずいずれかの部位に膣を想定する、の意〉

 

この探求を放棄させ

この探求を排除させ

 

p103

後になっても意識して回想することができる

後になっても意識的に想起できる

 

この小児たちは以前には、そのとき以後に現れた肛門愛的な性的な要因の抑圧が、現在の時点では邪魔をしているような別な出産の理論を信じこんでいたなどということはすっかり忘れてしまっているのである

この小児たちはすっかり忘れてしまっているのだが、以前には別な出産の理論を信じこんでいたのであり、この理論は、肛門愛的な性的要素がそのとき以後に抑圧されたので、現在の時点では妨害されているのである。

 

糞塊のように生まれてくるというようなことは禁忌とはされないのである。

糞塊のように生まれてくることは価値下げDegradationとはされないのである

 

p104

しかしこの見解はこの残酷な活動へのあの暗い衝動を再帰させる印象となるのである

しかしこの見解はこの残酷な活動へのあの暗い衝動の再帰という印象を与えるのである

 

この印象は

この衝動は

 

多分は、性交についてこのような推量をなさしめたものでもあろうかと思われる昔のサディズム的な衝動が、両親の性交についての暗い回想の影響のもとに出現したものであるかもしれぬということは否定できないのである。この回想の材料は

昔のサディズム的な衝動は、かつて性交についてすんでのところで察知させるところであったものだが、これが両親の性交についての暗い諸記憶の影響のもとに出現したという可能性も非認ableugnenできないのである。こうした諸記憶の材料は

 

自分のこの見解を偶然に目にしたことによって支持する立場におかれることがある。この認知は

自分のこの見解を偶然の知覚によって支持する立場におかれることがある。この知覚は

 

p105

「結婚している」と名づけている状態の内容の本質についての

「結婚している」と名づけている状態の内容と本質についての

 

両親について偶然に目にしたことに加えて自分自身の快感がつよく起こる欲動的な行動とがどう同時にくるかによるのである。結婚することは快感の充足を

両親について偶然に知覚することと、快感がつよく起こる自らの欲動とが、一致する程度によるのである。結婚することは快感の満足を

 

という余計な知識を暗示しているように見える

という余計な知識を暗示しようとしているように見える

 

読書に刺激されて

読書に誘発されて

 

この好色少女はまだ月経がないので

この好色少女は、自分の同胞にはまだ月経がないので

 

結婚の本質に関する幼児的な意見は意識されたままに記憶されていることも

結婚の本質に関する幼児的な意見は意識的記憶に保持されていることも

 

結婚していることからくる決着を

結婚ということを成り立たせている事柄を

 

性的な欲動要因の影響によって

性的な欲動要素の影響さえあれば

 

小児の性生活以外の生活との関連については資料も完璧ではないし、隙のない関連性を確立することもできていない

資料も完璧ではないし、小児の性生活以外の生活との関連については隙のない関連性を確立することもできていない

 

ただ一つだけ付け加えて、補っておきたいことは、それなくしてはどの消息通も間違っただろうことである

ただいくつか付け加えてさらに補っておきたい。それなくしてはどの消息通ももの足りなく思うだろうことである

 

p106

たとえば、われわれは

たとえば、ひとは

 

偶然に気づいたことから

偶然の知覚から

 

けっして完全には征服されることのない性に対する疑惑と矛盾する見解を含んでいるのである

けっして完全には征服されることのない父性に対する疑惑を、打ち消そうとする意図を持っているのである

 

「無垢の花嫁」が結婚の初夜に夫が自分のそれのなかに

「純潔な娘unschuldiges Maedchen」が結婚の初夜になってさえ、夫が自分のなかに

 

小児の性理論は

小児の性研究は

 

幼児の性的要因が抑えられないままに、しかも、変化しないままでその理論のなかにそれを貫いて表現されていないかぎりは

幼児の性的要素が抑制されないままに、しかも変貌しないままで、その理論のなかにまで浸透して表現されていないかぎりは

 

第一にはそこで得られた解説の性質に

第一には届けられた解説の性質に

 

p107

無意識化された初期のころの性的関心をもういちどよびさますことにあり、手淫という性活動と両親からの感情的な分離の一部がそれと結びついているだけのことなのである

無意識的になった初期のころの性的関心の痕跡をもういちど賦活して、手淫という性活動と両親からの感情的な離脱Abloesungの一部にそれが結びつくことにある

 

この一回の営みから順次に子供が生まれてくるものだと期待したのであった

この一回のことから、順次に全ての子供が生まれてくるものだと期待するようになったのであった

 

別のある少女は妊娠期間、母体内の生存を見過ごしてしまい

別のある少女は妊娠期間を、つまり母体内の生存を、見過ごしてしまい

 

くみつくしがたいものがあり、しかもけっして一般的には興味がなくもないものは、このやや長じた小児、または小児期までひきもどされた青春期のものたちの性の探求というテーマである。

この小児、または小児期に抑留された青春期のものたちの、後年の性の探求というテーマは、くみつくしがたく、しかもおそらく一般的に興味深いものでもある。

 

そのさいには小児について多くの不正なことが明るみに出されるが、より昔のよりよい、しかし、無意識になってしまった抑圧された認識と矛盾することになるということである

そのさいには小児について多くの間違ったことが明るみに出されてしまい、より昔のよりよい、しかし無意識的になってしまった抑圧された認識を打ち消してしまうということである

ここは正直なところ自信がない。

 

この抑圧は後年にいたるまで、すくなくも神経症者たちが精神分析を受けて、幼児期に由来する知識が姿を現してくるまでは無知のままにとまっているというまでに成功することがある。

このひとたちは後年にいたるまで、すくなくもみたところは無知のままにとまっているというまでに成功することがある。神経症者たちが精神分析を受けて、より早期の幼児期に由来する知識が姿を現してくるまで〈成功は続く〉。

 

保護者にあたる男性は否定的な答を与えたのであった

語り手に対して拒否的な答を与えたのであった

 

p108

この小児の性的な好奇心の満足に対する振る舞い方は

小児の性的な知的欲望の満足に対するこの後年の振る舞いは

 

そのはじめのころの幼児期にはまったく同じような行動を認めなければならないし

そのはじめのころの幼児期にはまったく一様な態度を仮定しなければならぬし

2002年9月28日作成


フロイト著作集6巻139頁 

「女性のセクシュアリティについて」

1章の翻訳正誤表

p139

女性の性愛Sexualitaet について

Sexualitaet の訳語は、Erosの訳語と区別するため、セクシュアリティがよいのではないかと思われるが、この論文にはErosという語が登場しないので、今後すべてを指摘することはしない。

 

情愛深く執着するのに

情愛的に愛着するのに

この論文で「愛着(する)」と訳されているのは全てBinden(Bindung)であるが、例えば母親との愛憎入り交じったアンビヴァレントな関係をも指すことを考えると、「愛」という語を含まない訳語、たとえば「拘束」という訳語の方が適切と思われる。

 

男児の情愛のこもった志向が

男児の惚れ込みの志向が

 

私はここに報告するような女性についていくつかの観察をしたことがあるが、彼女たちは私が婦人の性愛についていくらかでも理解をもつようにしてくれたのである。

私はそのような女性についていくつかの観察をしたことがあり、ここに報告しよう。彼女たちは私が婦人のセクシュアリティについていくらかでも理解をもつようにしてくれたのである。

 

p140

この第二期は対象の変換がくるまでのあいだに、愛情の生活に対して何ら新しい特質を付け加えてはいなかった。

この第二期は、対象の交替という点を除けば、愛情の生活に対して何ら新しい特質を付け加えてはいなかった。

 

男性への正しい転換をとげないでしまう

男性への正しい向き直りをとげないでしまう

 

女性が正常なエディプス状況に達するのは、ある受動的なコンプレクスに支配されている原始期を克服してからである

女性が正常な陽性のエディプス状況に達するのは、ある陰性のコンプレクスに支配されている原始期を克服してからである

 

男性と女性の性愛の発展が

男性と女性の性的発達が

 

p141

双方ともが女性の特殊な性格に属していること

双方ともが女性らしさの特殊な諸性格に[そのひとつとして]含まれること

 

きまっておそわれる不安

きまって見出される不安

 

投げかけのメカニズムが

投影のメカニズムが

 

2章の翻訳正誤表

p142

男性のペニスに類似した陰核

男性の陰茎に類似した陰核

 

思春期になってはじめて感覚をそなえるようになる

思春期になってはじめて感覚を供給するようになる

 

すなわち小児期において性欲の主導的地位にたつものは、女性の場合には陰核においていとなまれるのにちがいない

すなわち小児期における性器活動Genitalitaetにおいて起こることは、女性の場合には陰核においていとなまれるのにちがいない

 

p143

父親という法廷が内面化されて超自我となったのちに解かれなければならない課題は、この後者をもともと心的に代表してきた人物からこれを解放するということである。

父の審級が内面化されて超自我となったのちに解かれなければならない課題は、この後者がもともと心的に代表してきた人物たちからこれを解放するということである。

 

第一は性愛からすべて遠ざかるとことまでゆくものである

第一はセクシュアリティからの全般的な離反に向かう

 

その男根期的な活動を拒否するようになり、ちょうど他の領域にある自分の男らしさの大部分を否むのと同様に、性愛一般を拒否するようになる

そのファルス的な活動を断念し、さらにセクシュアリティ一般や、他の領域にある自分の男らしさの大部分をも断念する

 

「男性コンプレックス」

「男性性コンプレックス」

「男性性」はそれ以外の箇所で「男らしさ」と訳されているのと同一の語

 

p144

男性の場合にはこれに破壊的な作用をおよぼすあの敵意のこもった強い影響からもまぬがれている

男性の場合これ[=エディプス・コンプレックス]に破壊的な作用をおよぼす[エディプス・コンプレックスにとって]敵対的な影響からも、まぬがれている

 

女性を低く見たり圧迫したり

女性を蔑んだり禁圧したり

 

反対者は女性の性というものを認めようとしないことを、自分なりに自明のことと考えているのであろうが、それは男性と同等であろうとする強い願望とそれが矛盾するように思われるからなのだ

反対者たちは自分たちなりに当然と考えているのであろうが、女という性は、男との同列視を強く欲望しこれに矛盾するように思えるものを受け入れたがらないのである。

 

女性の性生活の多くの現れは

女性の性生活の多くの現象は

 

母対象から父対象への情愛のこもった愛着の写しかえこそは

母対象から父対象への情動的愛着の転記ueberschreibenこそは

 

p145

これほど強く独占的に

これほど強く排他的に

 

宣告を受けているのである

断罪を受けているという性格である

 

目標の達成が阻まれている愛情関係の場合と同様に、リビドーの割り当てが

目標を制止された愛情関係の場合と同様に、リビドー備給が

 

発達にともなう諸過程の圧迫を

発達にともなう諸事象の衝迫を

 

反抗的に男らしさを強調する方向

反抗的に男らしさを過剰強調する方向

 

固有の男根期に属する活動の状態は、それが発見されるにしても、されないにしても、また発見されたのちにどの程度の障害をこうむるにしても、いずれは観察の対象になるのである

[女性に]固有のファルス的活動の状態は、それが発見されるにしても、されないにしても、また発見されたのちにどの程度の阻止をこうむるにしても、やはり問題となるのである

 

p146

男根期に固有の活動

[女性に]固有のファルス的活動

 

自分の意のままにしよう

自分に依存させよう

 

それをやめさせる

それを放棄させる

 

小児が手淫を抑えることに

小児が手淫を禁圧することに

 

男児をも母親から離反させるようなある強い動機を

男児にも母親への反抗心のある強い動機を

 

p147

このような否定的な特徴が

このようなネガティヴな特徴が

 

女性であるということの

女性性の

 

記憶するのに都合のいいように変形されたりする

記憶のために歪曲されたりする

 

自慰的な行動に対する罰として

自慰的な活動に対する罰として

 

p148

一度も愛の期待をすべてみたしてやったことがないとか

一度も愛の期待をすべて充足してやったことがないとか

 

母親が性の活動をはじめには刺激しておきながら

母親が固有の性的活動をはじめには誘発しておきながら

 

これらはいずれも究極の敵意を

これらはいずれも最終的な敵意を

 

他のものは自分には理解できなかった感情の変化に合理化の装いをほどこしたものにすぎないようにみえる

他のものは、理解できなかった感情の変化に、後年のようにきちんとした合理化をすることから得られているようにみえる

 

しかも非常に強い恋愛によって

しかも非常に強い惚れ込みによって

 

アンビヴァレンツが感情のわりふりにとって

アンビヴァレンツが感情備給にとって

 

正常な人間や成人にとっては

正常な成人にとっては

 

母親から離れてゆくように仕向けられるのであって、したがってこれもまた、小児期性愛の

母親から離反するように衝迫されるのであって、したがってこれもまた、小児期のセクシュアリティの

 

p149

それは男児たちは自分の反抗的な感情を

それは男児たちは自分の敵対的な感情を

 

男児たちのエディプス前期を

男児たちの前エディプス期を

 

3章翻訳正誤表

p149

ひたすら母親に

排他的に母親に

 

能動性と受動性との関係が

能動性と受動性との比Verhaeltnisが

 

以前に自分がされたりさせられたりしたこと

以前に自分がされたり一緒にさせられたりしたこと

 

苦痛な内容をもっているために小児がそれを避けるきっかけをもつこともできたであろうような印象を

苦痛な内容をもっているために小児が避けねばならないような印象を

 

p150

お手洗いにゆくようにしたり

お手洗いにゆくように促したり

 

しかしここに現れているのは女性の能動性なのである

しかしここに現れているのは女性性の能動性なのである

 

女児の大変意外な性的な積極性は、時間的な順序にしたがえば口愛期、サディズム期、そして最後には男根期というふうに母親に向けられた志向として現れる

女児の大変意外な性的な能動性は、時間的な順序にしたがえば口愛的志向、サディズム的志向、そして最後にはファルス的志向、というふうに母親に向けられた諸々の志向として表出する

 

欲動の暗い動きなのであって、そのためにそれはまずおくればせに注釈がほどこされ

欲動の暗い動きだからなのであって、そのためにそれはまず事後的に解釈がほどこされ

 

p151

小児が推測しているような母親の無意識の敵意によるものであるかは

小児が察知する母親の無意識的敵意に便乗〈結託?anlehnen〉するものであるかは

 

ブルンスヴィッグの注目によって

ブルンスヴィッグの考察によって

 

強い受動的な刺激は攻撃欲の応酬をうけるのであって

強い受動的な刺激は攻撃欲の発現という応答をうけるのであって

 

圧迫されたために不安となって

禁圧されたために不安となって

 

男根期の受動的な感情の動き

ファルス期の受動的な〈欲動の〉動き

 

またはその代理のひと、養育者など

またはその代理となる養育者など

 

p152

性生活に誘い入れたという点も父親の方に移しかえられたのである

性生活に誘い入れたという点も父親に転記ueberschreibenされたのである

 

そのさいにはおそらく母親が思い浮かべられているのであろうが、しかしそれが子どもに性目標という表象を持たせることになるのかどうか

そのさいにはおそらく母親が表象されているのであろうが、しかしそれが子どもに性目標の表象を持たせることになるのかどうか

 

その挙動もまた同じことなのである

その挙動もまた〈男児と〉同じなのである

 

この離反と手をたずさえて能動的な性愛活動の強い低下と、受動的な性愛活動の亢進が

この離反と手をたずさえて能動的な性的な〈欲動の〉動きの強い低下と、受動的な性的な〈欲動の〉動きの亢進が

 

能動的志向はそれだけ強い拒否に

能動的志向は〈受動的志向よりも〉さらに強い頓挫に

 

かなりの部分が永続的な障害をうける

かなりの部分が永続的な傷害をうける

 

父対象への移行は、受動的な志向が瓦解しないかぎりは、その助けによって成就される。女らしさの発達に至る道は、克服された前エディプス期的な母親への愛着の名残によって狭められていないかぎりは、いまは女児の自由にまかされているのである。

父対象への移行は、受動的な諸志向の助けによって成就されるが、ただしそうなるのは、受動的な諸志向が瓦解してしまわない場合に限られる。女らしさの発達に至る道はこの場合女児に開放されるが、ただしそうなるのは、克服された前エディプス的な母親への愛着の名残によって狭められていない場合に限られる。

 

さて女性の性愛の発達について

さて女性の性的発達について

 

男児の場合と同じような

男児の場合と同一の

 

p153

性愛の動きを

性的興奮を

 

まず容易に期待できるのは、生化学がいつかは、それがあれば男性的な性の動きを惹き起こすが、これは女性的な性の動きを惹き起こす、というようなある物質をわれわれに提出してくれるであろう、ということである。しかしこのような希望のほうが、今日では幸いなことに克服されてしまっているが、顕微鏡のもとでヒステリーや強迫神経症やメランコリーなどの病原体を別々にみつけようというもう一つの希望にくらべればまだ素朴ではない、などとは思えないのである。

まずすぐに思いつく予想としては、それがあれば男性的な性的興奮を惹き起こすという物質や、それとは別の、女性的な性的興奮を惹き起こす物質を、生化学がいつかわれわれに提出してくれるであろう、ということがある。しかしこのような希望が素朴なものであることは、顕微鏡のもとでヒステリーや強迫神経症やメランコリーなどの病原体を別々にみつけようという、今日では幸いなことに克服されたもう一つの希望と大差のない素朴なものにすぎない。

 

性愛の科学においても

性化学においても

 

つまり満足の仕方を心得ているリビドーがただ一つだけあれば、それで十分なのだということである

つまり満足の〈二つの〉仕方を心得ているただ一つのリビドーだけで済むということである

 

4章翻訳正誤表

p153

小児が父親に幻滅を感じて

小児が父親に幻滅したため

 

生涯の間にある心的態度から別のそれへと繰り返し変転したりすることによって生じてくるような複雑な合併症状などもとりあげる

生涯の間にある構えから別の構えへと繰り返し変転したりする際に生じてくる錯綜した事態なども、とりあげる

 

p154

男児と女児における前エディプス期の完全な一致が

男児と女児における前エディプス期の完全な同一性が

 

母親に対する女児の性愛的な(男根期の)活動が

母親に対する女児の性的な(ファルス的)能動性が

 

女児の男根期の活動や

女児のファルス的能動性や

 

父親への転向は

父親への向きなおりは

 

受動的な志向の途上で

受動的な志向の道筋の上で

 

女児の男根期の活動を父親との同一視として解釈していた

女児のファルス的能動性を父親との同一化として解釈していた

 

性器前期的前史について

前性器期的先史について

 

前エディプス期の不変な

前エディプス期からの不変な

 

中止したものであるか

歪曲されているものであるか

 

女児の男根期的な活動を

女児のファルス的能動性を

 

p155

すでに二歳のはじめごろに

すでに人生の2年目のはじめごろに

 

前エディプス期的な

前エディプス的な

 

両親の相手を求めたりあるいはしりぞけたりするような振る舞い

両親による、心を惹き付けるあるいは拒絶するような振る舞い

 

小児の性愛の発達を

小児の性的発達を

 

二次的ペニス羨望に帰せられているが、このペニス羨望は女性的な感情の動き、とくに父親に対する女らしい愛着を防御するために用いられるものなのだ

二次的ペニス羨望に帰せられるべきであり、このペニス羨望は女性的な感情の動き、とくに父親に対する女性的愛着を、防衛するために用いられるものなのだ

 

男性コンプレックス

男性性コンプレックス

 

他のものはその強さをもっぱら防御に

他のものはその強さをもっぱら防衛に

 

p156

女らしさへの防御が

女らしさへの防衛が

 

二次的な防衛反応だという

二次的な保護反応だという

2002年9月28日作成