フロイト著作集第９巻
ざっとみた範囲での翻訳正誤表
『自伝的に記述されたパラノイア（パラノイド性痴呆）の一症例に関する精神分析的考察 』
序章／１ 病歴
ｐ２８３
それゆえ私がパラノイアの機制をいっそう深いところまで理解できたのは例外的な場合だけであった。
それゆえ私がパラノイアの機制をいっそう深いところまで理解できるのは例外的な場合だけである。
まさに他の神経症患者が秘密として隠しているもの（無意識）を
まさに他の神経症患者が秘密として隠しているものを
ｐ２８４
パラノイア患者に対して（神経症患者の分析療法の場合のように）内面の抵抗を克服せよと命ずる
パラノイア者に対して内的抵抗を克服せよと強制する
ｐ２８５
患者の既往歴と
患者の前歴と
ｐ２８６
すなわち彼が昔患ったことのある神経症が
すなわち彼が昔患ったことのある神経病が
「女になって性交されたらどんなにすばらしいだろう」という考えを抱いた。
「女になって性交されたらどんなに素敵だろう」という表象を抱いた。
・もしはっきり目覚めた時であったら、彼は大いに憤慨してその考えを
・もしはっきり意識があったら、彼は大いに憤慨してその表象を
追跡念慮が、しかも妄覚に基づいて現れてきた。その幻覚も
迫害念慮が、しかも錯覚Sinnestaeuschungenに基づいて現れてきた。その錯覚も
幻視や幻聴が頻発し
錯視や錯聴Gesichts- und Gehoers-taeuschungenが頻発し
ペストに罹ったとかと妄想し、自分の肉体にはもうありとあらゆるむごたらしい処置が加えられているのだと言い、
ペストに罹ったとみなし、自分の肉体にはもうありとあらゆるむごたらしい処置が加えられているのだと妄想し、
完全に病的な暗示にとりつかれてしまって、周囲からのどんな働きかけとも疎通性を失い
完全に病的な諸々の霊感Eingebungenにとりつかれてしまって、周囲からのどんな働きかけも到達できなくなり
「霊感」の語はｐ２８８下段１９行目に合わせた。
彼は＜不思議な現象＞を見
彼は＜奇蹟的現象＞を見
「奇蹟Wunder」はこのあと頻出するのでそちらに合わせた。
彼が迫害妄想の中で自分を追いかけ、迫害していると思いこんでいる
彼が自分を迫害し、侵害していると信じている
ｐ２８７
換言すれば幻覚性妄想状態
換言すれば幻覚性の狂気Wahnsinn
ｐ２９３上段２行目「狂気」にあわせた。
パラノイアの病像が次第に決定的な形で出現し、現在見られるとおりの症状が
パラノイア性の疾病が次第に決定的な形で出現し、現在見られるとおりの病像が
・彼の意識は清明であり
・彼は冷静besonnenであり
それをまた秩序正しい思考過程を通して
それをまた秩序正しい思路を通して
患者は病的な諸観念に満たされている。つまりそれらの観念は
患者は病的な諸表象に満たされている。つまりそれらの表象は
現実の状況の客観的把握や判断によって訂正をしようとしても患者はその疎通性を欠いているように思われる
事実状況の客観的把握や判定によって訂正をしようとしてもそれらの諸表象Vorstellungenには到達できないように思われる
ｐ２８８
彼はむしろ宗教的生活に対する自己の思考過程の価値を確信し
彼はむしろ宗教的生活に対する自己の思路の価値を確信し
妄想の内容に支配されて
妄想の内容にせまられて
彼は家族全体の関心の的となるような職業上の用件にさえ、専門的で適切な態度で携わる
彼は家族全体の関心の的となるような事務的な用件にさえ、専門的で適切な仕方で介入する
自己の妄想の存在を少しも否定しようとせず
自己の妄想の存在を少しも否認しようとせず
人類に失われた幸福を、再び取り戻すべき使命を帯びていると信じるときに絶頂に達する
人類に失われた浄福Seligkeitを、再び取り戻すべき使命を帯びていると信じるところにその骨頂がある
Seligkeitの訳語としての「幸福」は７行前に既出。この語はこのあとも頻出し、「幸福」または「至福」の訳語が当てられている。
特別に興奮しやすい神経の持ち主は、とりわけ神に働きかける特性を持っているが
特別に高ぶりやすい神経の持ち主は、とりわけ神に引力を及ぼす作用anziehend auf Gott wirkenを持っているが
「引力」についてはｐ２９５下段ほかを参照。
ｐ２８９
要点は、彼が女性になりたいということでなく、むしろその転換が世界秩序に基づく＜必然＞によるものであって
問題は、彼が女性に変貌したいzum Weibe verwandeln wollenということでなく、むしろ、世界秩序に基づく＜必然Muss＞であって
「転換」の語は「転換ヒステリー」という場合のKonversionと紛らわしいので、verwandelnには「変貌」をあてたい。なお、この語はこのあとも頻出し、ほぼ一貫して「転換」の訳語が当てられている。
初めて来世の幸福を
初めて来世を
・彼と語り合うもろもろの声によっても証明されるように、明らかに彼はその奇蹟を体現している
・彼と語り合うもろもろの声によっても証明してもらっている
・彼の身体の各器官の障害、すなわち他の人間がかかったらとっくに死んでしまっていたはずのもろもろの障害を受け
・彼の身体の各器官の破壊Zerstoerung、すなわち他の人間がかかったらとっくに死んでしまっていたはずのもろもろの破壊Zerstoerungを受け
下段３行目にあわせた
自分は神と直接に結びつくことによって受胎し、その神経から新しい人間が生まれるであろう
神は直接の受胎によって、その神経から新しい人間を生ぜしむであろう
彼が妄想に支配された行動を確認し
精神科医が妄想のはたらきを確認し
精神病者たちに関する
精神神経症者たちに関する
ｐ２９０
つまり人間の通常の思考からはるかに隔たった特異な思考形成といえども、やはり精神生活のもっとも一般的な了解可能な感情の動きに由来する
つまり人間の通常の思考からはるかに隔たった特異な思想形成物といえども、やはり精神生活のもっとも一般的な了解可能な動きに由来する
救済の使命と
救済者の役割と
このような歪曲の動機とその機制を
このような改造Umbildungの動機とその方法を
われわれになじみぶかい一つの妄想であり
われわれになじみぶかい一つの空想であり
救済者たらんとする目的を実現する一つの手段をも意味しているにすぎないことを、われわれは医師の鑑定書を手がかりにして認識することができる。たとえこの事実が、最終的に完成された妄想中にこのような形をとって現れたとしても、なお、われわれは「回想録」の研究を通して全く別なやり方でこの事実を理解する必要がある。
救済者たらんとする目的を実現する一つの手段という意味づけしか要求しないことを、われわれは医師の鑑定書を手がかりにすれば、仮定したくなる。この事実は、最終的に完成された妄想中にこのように現れているのは確かだが、それでもなお、われわれは「回想録」の研究を通して全く別な見解を立てる必要がある。
女性への転換（非男性化）が第一回目の発病時に現れた妄想であったこと、その妄想が最初のうちは激しい被害妄想および迫害妄想の結果体験されたものと診断されたこと、そしてそれが第二回目の発病に当たって初めて救済の使命意識と結びついたという事情をわれわれは知っている。もちろん、この妄想はもともと性的悪用を目的として生じたのであって
女性への変貌（脱男性化）が一次妄想であったこと、それが最初のうちは激しい侵害と迫害の行為と判定されたこと、そしてそれが二次的に初めて救済役と結びついたという事情をわれわれは知っている。もちろん、この女性への変貌はもともと性的悪用を目的として生じたのであって
後になって宗教的な誇大妄想に変形したのである。
事後的nachtraeglichに宗教的な誇大妄想に改造umbildenしたのである。
２行後の「後になって」はspaeter
ｐ２９１
当時私を主として支配していた人間関係という点から考えて
当時まだ私を主として支配していた人間的観点から考えて
全能の神を私の当然の盟友と
この前後の「盟友Bundesgenossin」はわざわざ女性形にされている。
ただフレヒジッヒ教授に対する戦いのときだけ、苦境に陥ったときだけ空想したわけでる。それゆえあらゆる手段を用いて、自分を犠牲にしてでもその盟友を援けなければならないと確信した
ただフレヒジッヒ教授に向き合ったときだけ、苦境に陥って妄想し、それゆえ、考え得るあらゆる手段を用いて、自分を犠牲にしてでもその盟友を援けなければならないと確信した
世界秩序に反することを目的とする（すなわちある人間の性的欲求を満足させるための）非男性化は
世界秩序に反した目的のための（すなわちある人間の性的欲望を満足させるための）脱男性化は
世界秩序を目的とする脱男性化も
世界秩序に適合した目的のための脱男性化も
患者が聴いた「声」（幻聴）は女性への転換をもっぱら性的な屈辱と見なしており、女性へのこの転換について患者がその「声」から嘲笑されるのもやむをえないことであった。（われわれがこのような見解をここに挿入すると、次の言葉が明瞭になる。すなわち）
患者が聴いた「声」は女性への改変Umwandlungをもっぱら性的な恥辱と見なしており、この恥辱のため患者がその「声」から嘲罵hoehnenされるのもやむをえないことであった。
ｐ２９８の「嘲笑」の原語はspottenなので区別した。
＜ミス・シュレーバー＞といって嘲るのは当然と考えていた。
＜ミス・シュレーバー＞といってしばしば嘲罵verhoehnenするのは当然と考えていた。
「原始語」
「基本語」
ｐ２９２
まじめな問題を論じている場合には、どんなテーマもそんなに恥じる必要なしに扱うことが許されると思っている。
まじめな問題をそんなに恥じねばならない動機を知らない。
「観念」すなわち「女になって性交をしたらどんなにすばらしいだろう」（同三六頁）、という観念
「表象」すなわち「女になって性交されたらどんなに素敵だろう」（同三六頁）、という表象
脱男性化妄想の第一の性質、さらにはその性質が
脱男性化空想の一次性、さらにはそれが
脱男性化妄想と救済者観念
脱男性化空想と救済者観念
世界秩序が私に非男性化を
世界秩序が私に脱男性化を
・はかなく消え去ってしまうような男性たち
・かりそめに急ごしらえされた男たち
ｐ３３６、ｐ３３７を参照
このような脱男性化妄想の実行と同時に
このような脱男性化空想の実行と同時に
ｐ２９３
違いに矛盾しあう対立的な傾向で満たされているが
違いに矛盾しあう対立的な規定を満たしているが
幸福、神による階層組織
浄福、神的ヒエラルキー
人間の精神は
人間の魂Seeleは
「魂の殺害」などの言い回しと統一した。なお、著作集でこの語は、「霊魂」と「魂」の二様に訳されている。
組織を思わせる肉体の神経に宿っている
形成物Gebildeと想像される肉体の神経に宿っている
形成物Gebildeについてはｐ３００下段を参照。
もっぱら感覚的知覚のみをつかさどり
もっぱら官能的sinnlich〈＝感覚的〉知覚のみをつかさどり
その数の如何にかかわらず、悟性神経だけが、さまざまの心理的印象を時間を超えて保持することができるような時間の持続に関係しているといった状況が成立するのである。
その数が多いか少ないかは、単にさまざまの印象を保持しうる持続時間に影響するだけである、といった状況が成立するのである。
ここでは神経に置き換えられていて
ここでは神経に転移されていて
その無限の能力によって創造が行われる。つまり創られた世界の、ありとあらゆる事物に自在に変わることのできる可能性を持つ神経、それがすなわち光である。
創造する能力、つまり創られた世界の、ありとあらゆる事物に自在に変換されることのできる能力、これを持つ神経がすなわち光である。
容易に両者に共通な性質を通して直線的な形で飛躍的に結びついて表現されてしまったのであろう。
容易に線状の現れを共通点として受けいれることができたのであろう。
ｐ２９４
・彼の霊魂（神経）は
・彼の霊魂部品Seelenteile（神経）は
彼の神経の一部に違った形体を
彼の神経の一部に違った形態を
数千年後死者の祝福された神経が
数千年後死者の浄福に至った神経が
後ほどわれわれは理解するであろう
ｐ２９６上段
最上の幸福を与えられる。
浄福の享楽Genusseに置かれる
神自身から語られた言葉
神自身によって語られる言葉
この最上の幸福とは本質的に肉欲的快感にある
これは本質的に悦楽感情Wollustgefuehlにある
ｐ２９５
それぞれ全く違ったやり方で不幸なシュレーバーを意地悪く苦しめたのであった。
それぞれ全く違ったやり方で不幸なシュレーバーに対し振る舞った。
自分の妄想が現実的に少しも誤っていないことを主張する証拠
自分の妄想の現実性の論拠
その後の救済者妄想の中にも
現在の救済者の中にも
自分にただの幻覚が起こるにすぎない
自分にただの錯覚Sinnestaeuschungenが起こるにすぎない
２行後も同様
特に極度の興奮状態に達すると、神の神経に対して逆に次のような影響力を及ぼすにいたる。
特に極度の興奮に達すると、神の神経に対して逆に次のような引力Anziehungを及ぼすにいたる。
２行後の「影響力」も同様に「引力」に変更。「引力」はｐ２８８下段の最後の２行にも既出したが、この後も何度か登場する。
ｐ２９６
神が生きている人間をその世界秩序の欠陥のために理解しなかったこと
神が生きている人間をその世界秩序に従って理解しなかったこと
世界秩序にしたがって死者との交わりだけしか知らなかったことに由来している
世界秩序に適合して死者との交わりだけしか知らなくてよかったことに由来している
生きた人間に対するこのような神の無理解さを理由にして考え出された考えは、神自らがシュレーバーを狙う陰謀の発案者になったということ、神がシュレーバーを低能だと思い
生きた人間に対するこのような無理解のせいで、次のようなことが起こりえた。すなわち、神自らがシュレーバーを狙う陰謀の発案者になったということ、神がシュレーバーを白痴bloedsinnigだと思い
彼は神のこの判決を逃れるために
彼は神のこの断罪を逃れるために
神は私の思考活動を支配しようと思うたびごとに、私の精神能力が一次的に失われたものと見なし、神の思い通りに、悟性の崩壊（白痴化）が始まり、私が退化していくと考えた。
神は私の思考活動が停止するたびごとに、私の精神能力が失われたものとただちにみなし、神の望み通りに、悟性の崩壊（白痴化Bloedsinn）が始まり、退却Rueckzugの可能性が与えられると考えた。
Rueckzugについてはｐ２９７上段、ｐ３００下段、ｐ３０４上段を参照。
排泄衝動あるいは○○衝動が
排泄衝迫あるいはsch...衝迫が
隠された語は「scheissen＝糞をする、くそをたれる」ではなかろうかと思われる。このあとしばらく同様だが、ｐ２９１下段の「○○されたのは」の部分は原文では「f...」で、こことは別の語が隠されている。「衝動」を「衝迫」に変更することについてはこの後も同様。
ｐ２９７
排泄要求も
排泄欲求も
大便は腸を通して（逆行する場合もかなりあるのだが）
大便は腸を通して順方向に（逆行する場合もかなりあるのだが）
そのさい重要なことは
これは
全く腑に落ちない考え
全く腑に落ちない表象
奇妙な考えと結びついている
奇妙な表象に結びついている
つまり○○衝動の奇蹟によって悟性破壊の目的が完遂され、神の光による私の決定的な退化が成就される
つまり○○衝迫の奇蹟によって悟性破壊の目標が完遂され、光の決定的な退却Rueckzugの可能性が与えられる
Rueckzugについてはｐ２９６下段、ｐ３００下段、ｐ３０４上段を参照。
このような神の計画が思いつかれる
このような表象が発生する
神にとって、この排泄行為こそ神の光を神の目的通りに得るものなのであるから、この排泄行為を行って神の光を得た人物（私）は、あらゆる人と○○する権利を得ることができる。・・・
すなわち、神に対して私が結んでいるような関係に陥った人は、いわば、世界中の人に○○する〈＝くそをくらわす？〉権利を得ることができるなどと・・・。
私の排泄要求の奇蹟に驚く
私の排泄欲求に驚く
一方当人の神経を刺激しながら
その人の神経をそのように煽動anregenし
あまり白痴化したためにできなくなる
馬鹿なためにできなくなる
６行前の「馬鹿」にあわせた。
そこでもし私が生理的欲求にしたがって
そこでもし私が欲求にしたがって
激しい精神的快感が
激しい魂の悦楽Seelenwollustが
快感神経に何ともいえない満足を与える
悦楽神経Wollustnervenに何ともいえない心地良さWohlbehagenを与える
・私の大便排泄や排尿の衝動の高まりにびっくりして、またも取りおさえようとするが
・私の大便排泄や排尿の衝迫の高まりにびっくりして、奇蹟によっておし戻そうzurueckwundernとするが
ｐ２９８
何らかの経験を手がかりにして理解することができるというようなものではない
何らかの経験を手がかりにして理解する能力を持たない
ｐ３１９下段も参照。
同じような苦しい試練や奇蹟や神の声を
同じような苦しい試練や奇蹟や発声を
ついには迫害妄想の中で神を追跡者と考えるにいたった患者の嘲笑の的にもならねばならなかった。
ついには被迫害者の嘲笑の的にもならねばならなかった。
・「えい畜生め！
・「うへ、いまいましいなei verflucht」
ｐ３０５上段も参照。
すなわちここで一番重要なことは、私が希望するように、遅くとも私の死ぬ時までには完了されるはずの（神の計画完成という）一つのエピソードだけであるという点である。したがって神を嘲る権利は（特殊な使命を帯びたこの）私にだけ与えられていて
すなわちここで問題なのは、私が希望するように、のちに私の死ぬ時は完了されるはず一つのエピソードにすぎず、したがって神を嘲笑する権利は私にだけ与えられていて
たとえ在来の宗教的観念の
たとえ在来の宗教的表象の
それゆえシュレーバーに対する神の振る舞いを正当化しようと
それゆえシュレーバーに対する神の振る舞いについて、神を正当化しようと
ｐ２９９
あるいはまたフレヒジッヒ博士の霊魂の誘惑的な影響力について、神の存在の正当性は説明される。
あるいはまたフレヒジッヒ博士の霊魂の幻惑的irrefuhrendな影響力について、説明される。
シュレーバーの場合、以上の妄想が、通常見られる形式の救済者空想と関係あることは、医師の報告書からも容易に推定できるだろう。
シュレーバーの場合にわれわれが、通常見られる形式の救済者空想を扱わねばならないことは、医師の報告書からも容易に推定できたであろう。
・あるいはその目前に迫るその破滅から
・あるいはその目前に迫るその没落Untergangから
「世界没落」という表現にあわせた
彼（シュレーバー）の人格がその吸引力によって
彼（シュレーバー）の人格がその引力Anziehungskraftによって
至福にいたることは不可能である
浄福seligにいたることは不可能である
以上述べたような彼の神の観念の諸特徴
以上述べたような彼の神の表象の諸特徴
つまり（永世の）至福のテーマに
つまり浄福のテーマに
「至福」については今後も同様。
神の瞑想に繋がる永遠の享受の状態
神の観照Anschauungに結びついた不壊の享楽の状態
「神の瞑想」については今後も同様。
後者は特に永遠の性的快楽の感にひたり続けた
後者は特に不壊の悦楽感情Wollustgefuehlにひたり続けた
至福と性的快楽の一致が述べられ
浄福と悦楽Wollustの一致が述べられ
「性的快楽」については以下同様。
ｐ３００
性的快楽感を
悦楽感覚Wollustempfindungを
天上の至福は本質的に地上的な感覚の喜びの
天上の至福は本質的に地上的な感覚的快楽Sinneslustの
来世の生命によって（現世の）願望が実現されるという意味である
来世の生命に関する願望充足という意味である
やはりなんと言っても快楽は
やはりなんと言っても悦楽Wollustは
なお、この文の末尾に引用箇所を示す「（４４２頁）」という但し書きが訳文から抜けている。
一方では神との究極的な和解を求め、一方では自分の苦しみの終息を希望し、この二つの目的を自分が同時に実現することができるという確信を抱くにいたった根本なのだと患者は述べるのである。神の光が彼の肉体を通して霊魂に快楽をもたらすことが確実になるや否や
神との究極的な和解の希望と、自分の苦しみの終息の希望との二つの希望を築き上げる土台なのだと患者は述べるのである。神の光が、魂の悦楽Seelenwollustとともに、身体に消散することが確実になるや否や
神自身は彼を性的快楽の対象としようと努めるようになり
神自身は彼でもって悦楽を得ようと努めるようになり
もし彼が性的快楽を愛し強める努力を怠って
もし彼が悦楽の助成Pflegeを怠って
助成Pflegeについてはｐ３０１下段ほかを参照。
自分の光を引っ込めてしまうぞ
自分の光の退却Rueckzugで
Rueckzugについては、ｐ２９６下段、ｐ２９７上段、ｐ３０４上段を参照。
「感覚的に幸せな」
「官能的sinnlich〈＝感覚的〉に幸せな」
われわれの患者と性愛一般との関係、つまり性的享受の問題との関係
われわれの患者とエロティーク一般との関係、つまり性的享楽の問題との関係
いままで各神経症や精神疾患の発生の根源として
いままで神経や精神の各疾患の発生の根源として
ｐ３０１
まさにこのような妄想性疾患こそ
まさにこのようなパラノイド性疾患こそ
つまり性欲が
つまり性が
まるで「神経質」と性愛上の障害を
まるで「神経質」とエロス的な過ちerotische Verfehlungを
「性的な耽溺」
「悦楽的耽溺wolluestige Ausschweifung」
ｐ３２４上段７行目に同一表現がある。
そのとき人々のあいだに恐怖が拡がり、各宗教は根底からくつがえされ
そのとき人々のあいだに恐怖と驚愕Furcht und Schreckenが拡がり、各宗教の根底は破壊され
＜地獄の魔王＞のような無意味な力に
＜地獄の魔王＞のような不気味な力に
神に敵対する力として荒れ狂った
神に敵対する力として発展した
彼のこの公言を否定するような材料を
彼のこの公言を信じない証拠を
彼の性愛との関係は
彼のエロティークとの関係は
彼は性的快感を愛し強めることが
彼は悦楽を助成Pflegeすることが
助成Pflegeについてはｐ３００下段ほかを参照。
自分が一日中性的快感の行為に没頭できないことを
自分が丸一日を悦楽の助成Pflegeに割くことができないことを
ｐ３０２
しかしながら性的な神経が
しかしながらまさにその神経が
そこで自分が関与する霊魂の性的快感感情に出合う時には、またその時にかぎって、性的誘惑はその性的神経に対する恐怖心を失っていった。
そこで自分が関与する魂の悦楽感情に出合う時には、またその間にかぎって、引力Anziehungはその神経に対する驚愕Schreckenを失った。
かくして性的神経は、性的享楽の中にも
かくしてその神経は、悦楽の享楽の中にも
それはもはや男性的な性欲の解放ではなく、女性的な性愛感情であった。彼は神に対して女性的な態度をとり
それはもはや男性的な性的奔放Freiheitではなく、女性的な性的感情であった。彼は神に対して女性的な構えをとり
たとえ十分ではないにしても、一応は発達した女性の性器を
たとえ十分発達してはいないにしても、一応は女性の生殖器Geschlechtteilを
女性的な快感神経の性質を帯び
女性的な悦楽神経の性質を帯び
前述のこの女性的快感神経を、表皮の下に意図もしくは紐のような性質をもつものとして感じることができた。
前述のこの神経を、表皮の下に意図もしくは紐のような形成物Gebildeとして感じることができた。
形成物Gebildeについてはｐ２９３上段を参照。
私はこれらの場所を圧して
私はこれらの形成物Gebildeを圧迫して
ちょうど女性がその場所に感じるのと同じような性的快感を生み出すことができる
ちょうど女性のそれと同じような悦楽感覚を生み出すことができる
この肉体部分が
この形成物Gebildeが
「描写」
「図像Zeichnen」
女性の乳房と性器
女性の乳房と生殖器Geschlechtsteil
私の肉体に女性的なお尻を思い描くことが
私の肉体に女性的なお尻を図像化することZeichnenが
ｐ３０３
特に女性的に着飾ることによって幻想を助けるならば
特に女性的に着飾ることによって妄覚Illusionを助けるならば
彼の全身に快感神経が
彼の全身に悦楽神経が
快感神経は性器および
悦楽神経は生殖器Geschlechtsteileおよび
霊魂の性的快感は
魂の悦楽は
ほんのわずかの想像力を働かせれば
ほんのわずかの考想力Einbildungskraftを費やせば
感覚的快感がわき起こってくる
官能的sinnlich〈＝感覚的〉な心地良さBehagenがわき起こってくる
この夢に抵抗したのである。最初のうちは病気の徴候という形でこの夢が実現されていくことに反対し、女性への転換を（神の）悪意から
この夢に反抗したのである。彼ははじめ病気のあいだこの夢が実現されていくことを防ぎ、女性への転化Wandlungを敵意から
ｐ３０４の「女性への転化Wandlung」に合わせた。
しかしその彼がこの転換と和解し始め
しかしその彼がこの転化Wandlungと和解し始め
それ以来私は女性的なものの育成をはっきりと自覚して
それ以来私は女性性の助成Pflegeをはっきりと意識して
特に想像力を支配して私に働きかけてくる。
特に考想力Einbildungskraftを支配して、私に働きかけてくる。
性的快感に耽溺している女という印象を絶えず私が示すように私に働きかけた。もっとも性の転換という仕事は、人間の分際でそう簡単にできるというものでもないので、少なくとも特定の日時に私がそういう印象を与えるということで許されることもあった
悦楽感覚に耽っている女という印象を、私から、できるかぎり継続的に −これは、人間の分際でそう簡単にできるというものでもないので、少なくとも幾日かの日中の間に− 受け取るようにした。
魂の存在条件を維持するために、私に絶え間なき性的享楽を要求する。そして魂の快楽を
魂の存在条件に即応した、絶え間なき享楽を要求する。そして魂の悦楽を
神にその享楽をお返しするのが私の使命である
神にその享楽を提供するのが私の課題Aufgabeである
そのさい私が感覚的な享楽を幾分失うようなことがあっても、私は、長い間自分に課せられてきた法外な苦しみと禁欲に比べればそれはごくわずかな犠牲にすぎないと思うから、喜んでその損失を、その享楽といっしょに引き受けるつもりである
そのさい私のために〈＝私の取り分を差し引いて〉官能的な享楽が幾分失われるようなことがあっても、私は、長い間自分に課せられてきた法外な苦しみと欠乏Entbehrungenに比べればそれはごくわずかな代償にすぎないと思うから、私がその損失をかすめとるのは正当である
「苦しみと欠乏」はｐ２９１下段２行目を参照。
ｐ３０４
性的抱擁の中で自分と一緒に寝ている相手の女を
性的抱擁の中で私自身と一緒に寝ている相手の女を
２行後の「自分」も「私」に変更。「自分」では、神を指すかシュレーバーを指すかわかりづらい。
後退作用を推し進めるようなことをしない
退却行動Rueckzugsaktionへと進もうとはしないだろう
Rueckzugについては、ｐ２９６下段、ｐ２９７上段、ｐ３００下段を参照。
どんな抵抗もなしに
どんな反抗Widerstrebenもなしに
いつも同じ平均した歩調で性的な引力のままに
いつも同じ平均した歩調で引力Anziehungのままに
すなわち「女性への転化Wandlung」と
すなわち女性への転化と
彼の妄想体系の中で、神に対する女性的態度によって
彼の体系の中で、神に対する女性的構えによって
２００２年８月１９日作成／２００２年１０月７日改訂（改訂分は行頭の「・」で表示）
